ビールと温泉と映画が好きなおやじです。
歳をとるとなぜ歩行が困難になるのかに興味があって手に取った。 本書によるとその境目は50歳らしい。 50歳を過ぎた頃から歩行速度が急激に落ち、歩幅は小さくなり、前かがみで腰が曲がり、歩隔は広くつま先は外を向いてくる。この原因は足の変形にあるという。 外反母趾は特に女性は50代から急激に増加、男性では2%から7%程度だが、女性では13%から29%にも増加する。 さらに足の幅も広がる。これは横アーチが崩れて甲が下がり足が平たくなるから。 なぜ50歳を越えると足の変形が加速してくるのかには明確な答えはない。長年の酷使、身体の使い方の癖、足裏の筋肉の衰えなど原因は様々想像できるが、ともあれ、変形を少しでも遅らせて、死ぬまで自分の足で歩くにはどうすればよいのか。本書では、正しい靴選びと効果的なウォーキング法を紹介している。 ウォーキングは1分間に150歩!の早足で歩くファストウォーキングを提案。 靴選びは、さすがに靴メーカーだけあって、微に入り細に入り詳しく解説しているが、難し過ぎてよくわからない。 近所にアシックスのお店があるので、そこのシューフィッターさんに相談して買うのが良さそうだ。 しかし靴選び、一にデザイン、ニに価格、三四がなくて五にブランド、ってなもんだが、ほんとうはそれではいけない。いちばんは自分の足の形状にフィットしていて変形を食い止めてくれる靴だと、改めて認識した次第である。
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70ほどの睡眠にまつわるトピックについて、一問一答形式で最新学説から解説を加えたもの。 動物にとって睡眠とは何かといった生理学、脳科学的論点から、どうすれば快適な睡眠を得られるかといった日常的ハウツーまで、話題が幅広いのが特徴である。 個人的にヒットしたのは、睡眠の機能・役割を飲食店の営業に例えた下り。 営業中にはできないこと、店内の掃除やレジ締め、仕入れ・仕込みといった、翌日の営業に向けた準備を行うのが睡眠だ、ということらしい。 営業時間が長くなりすぎる(=睡眠不足)と、厨房に残飯や洗い物が溢れたり、お釣りや食材がなくなったりして、営業が続けられない。それで営業時間が決まっていて、時間がくると店を閉める。これが体内時計による睡眠のリズムに相当する。 それでも忘年会シーズンなど繁忙期はどうしても営業時間が長めになる。そうするとやはり店内が汚れたり、食材がなくなったりして、営業継続が難しくなる。これが睡眠負債の増加による睡眠圧の上昇。自然と眠くて眠くて仕方なくなる状態に相当する。 またレジ締めや予約管理、食材の在庫量など管理的側面も必須で、これを長い時間やらずにいると、いずれしっちゃかめっちゃかになって営業自体が崩壊する。これが睡眠中のシナプスのリフレッシュ=記憶の取捨選択に相当する。 上手なたとえ話は、理解の枠組みを作るのにとても助けになるが、これでわたしは睡眠の機能、役割がストンと腑に落ちた。 もうひとつは、レム睡眠行動障害。 夢で喧嘩をして、現実に足で壁を蹴飛ばすと言うようなことがままあるが、これは脳幹に何らかの異常があると言うことらしい。本来、夢を見ているときは、運動神経を麻痺させているので、こういう事は起こらないはず。パーキンソン病やレヴィー小体型認知症の恐れもあるので、専門医の診察を受けろとあった。単なる寝ぼけではなかったことがわかり、ちょっとショックを受けている。 が、まずは読んでよかった。
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睡眠時の脳の活動を調べるのに、以前は脳波計しかなかったが、fMRIができてから、睡眠時に活動している脳の部位が正確にわかるようになり、睡眠の仕組みの解明もずいぶん進んでいるようだ。 睡眠障害にはたいした治療法もなく、病院にいっても眠剤や抗うつ剤を貰うくらいで、医学ではお手上げ感が強かったが、生理学、脳科学的な知見が積み上がってきたことで、例えばナルコレプシーや夢遊病などの睡眠障害の治療法も確立されつつあるし、PTSDの治療にも睡眠を応用した療法が効果をあげつつあるなど、やっと睡眠が科学の土俵に上がってきた感がある。 こうした新しい知見は、睡眠障害の治療という側面だけでなく、いろいろな応用が試みられていて、とくに睡眠と記憶の関係を利用して、睡眠中に記憶を増強して学習効果を高めたり、あるいは不都合な記憶(PTSDの原因となっている悲惨な記憶など)を消したり、逆に全くあたらしい記憶を埋め込むこともできるそうで、このあたりがいちばんおもしろかった。 映画「インセプション」は2010年の作品だが、実に時代を先取りしていたというか、インセプションの世界がほんとうに現実になるのかもしれない。
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人は見た目が9割といいますが、声も見た目同様、人の印象作りに大きく影響している気がします。できればいつまでも若々しい声でいたいもの。そこで本書を手に取りました。 声が老ける原因は、加齢で「声筋」の力が弱って、声帯がしっかり閉じなくなるから。 喉頭には声帯の他に5つの筋があり、息を吸う時は気道を開き、息を吐く時は必要に応じて気道をしっかり閉じる役割があります。その必要というのが、声を出すとき、力を入れるとき、喉に異物が侵入した時です。 だから声筋が衰えると、フケ声だけじゃなく、身体に力がこめられず瓶の蓋が開けられなくなったり、つまづいた時に踏ん張れずそのまま転倒してしまったり、食べ物が気道に入るのを防げず「誤嚥性肺炎」を起こしたりする。声筋は全身の健康維持に相当重要な役割を果たしているようです。 で、実際のフケ声対策ですが、声筋も筋肉なので、トレーニングは筋トレ。でも大声を出せばいいってわけじゃありません。声筋に負荷をかけるには呼気に圧をかける。つまり息を吐きづらい状態にして声を出していく。 本書では、口をすぼめて低い声から高い声、高い声から低い声を出すとか、ストローを咥えて声を出すなどを紹介しています。管が長く細くなれば、それだけ圧が高まり負荷も高くなるのですが、ストローくらいでも十分、声筋トレを実感できます。 ただ「のー」とか「うー」とか声を出すだけではやっててつまらないし、すぐ飽きてしまうので、わたしは毎朝、懐かしの昭和ポップス(聖子ちゃんとか少年隊とか)を掛けながら15分間ストロー咥えてハミングしています。これはなかなか楽しいので、ずっと続けられそうです。 声筋が鍛えられたかどうかは、ロングトーンの発声が30秒できるかどうかで検査できます。いまのところわたしは24秒前後。頑張って30秒越えを目指してみたいと思います。
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幼少期から中学卒業(したのかな?)までの思い出話を酔客相手に語るモノローグ形式で、小説というより寅さんのトークショーっていう感じです。 さすがというか映画監督のお書きになったもので細部の描写が極めてリアル、とても作り話には思えません。映画のせいもあるでしょうけど、登場人物全員が実在の人物に思えてきます。 寅さんは昭和11年生まれという設定だから、5才から9才までは戦争中、9才以降は戦後の混乱期の真っ只中。わたしの母も昭和12年生まれなので、母の時代の人がどういう子供時代を過ごしたのか、そういう観点でも大変興味深く読みました。 ところで山田洋次監督は略歴では大阪生まれの東大卒ということですが、まるで葛飾柴又に生まれ育ったかのようなリアルで感情のこもった描写はどこからくるのでしょう? どうにも実話に思えてしかたありません。それが山田洋次の天賦の才っていうことなんでしょうけど。 本作は父親とケンカして家出するまでで終わっていて、それから20年後、郷里柴又に帰ってくるところから映画第一作が始まるわけですが、本作を読んだ人はまず間違いなく、また映画をみたくなるでしょうね。わたしももう、いてもたってもいられない感じです。
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ソルフェジオ周波数について調べていて、手にとった。 ネットでは古代グレゴリオ聖歌がどうとか、ピタゴラスがどうとか、由緒ありげに書かれているソルフェジオ周波数だが、実際には1990年代にジョゼフ・プレゲなる人物が枕元にたったイエスに啓示を受けて、聖書から「発見」した6つの数字(周波数)であり、それに本書の著者、ホロウィッツが3つの周波数を付け足して、合計9つのソルフェジオ周波数が出来上がったようだ。 したがって、ソルフェジオ周波数に歴史的・文化的な裏付けや積み重ねがあるわけではなく、つい最近、二人の人物がキリスト教を背景に作り上げた物語だ、ということだ。 ホロウィッツは大変博識なようで、数秘術やら量子力学やらを駆使して、528という数字(あるいは周波数)が、いかに神聖で万物に共通普遍な原理であるかということを、膨大な「証拠」で証明していく。ただこちらにほとんど知識がなく、簡単に検証や追体験できる内容でもないので、本当なのか妄想なのか、イマイチよくわからない。 例えばNASAが発表している「太陽の音」。これも528Hzだとホロウィッツはいう。で、ネットで拾って周波数解析してみたのだが…。残念ながら71Hzにピークがあるのみで528Hz付近にはなんの特徴もなかった。確かめてみた「証拠」がこれでは、全体の信ぴょう性にも疑問符がよぎる。 またホロウィッツはイルミナティの世界支配をいういわゆる陰謀論者でもあり、本書には陰謀論も同居していて構造も複雑、正直言って、内容はほとんど理解できなかった。 とはいえ、ホロウィッツが導き出したソルフェジオ周波数を「ただの妄想」と決めつけるつもりはない。これだけ多くの人が取り上げているのだから、なにかご利益があるに違いない。そのご利益を確かめてみたい。が、その具体的なメソッドやテクニックも何も書かれておらず、読んだはいいが、さて次はどうすればいいのか、ちょっと途方にくれている。
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手技療法を生業としていて、セルフコンディショニングの方法論の参考に、と手に取った。 深い呼吸は自律神経を交感神経優位から副交感神経優位に切り替える唯一のスイッチ、ということで、その理由は「横隔膜にはたくさんの自律神経が来ているから」ということだった。たくさんってどのくらい?などと野暮なことは聞いてはいけない。 慌てたときや、イライラしたとき、深呼吸をして気持ちを落ち着かせなさい、とは誰でも知っていることである。 深呼吸を一日、何回か行うことが気持ちを落ち着かせ、ストレスを緩和する。 それ以上の知見は本書にはない。 が、温故知新、改めて「呼吸って大事だよな」とは思った。 話は変わるが。 施術をしていると、ひとによって呼吸数がずいぶん異なるのに気づく。 体の大きさとか年齢、性別は関係ない。 若くてお相撲さんのように大きな体なのに、呼吸が浅く、1分に24回以上って人も少なくない。 医者じゃないので、なにがどう悪いと具体的にはわからないが、不自然な感じは否めない。 が、逆に呼吸が深い人が長生きしそう、っていう感じも別にしない。 人の身体に毎日10時間以上、触っている感じとしては、呼吸はその一瞬一瞬の健康維持には重要でも、100歳の長生きに直接関係しているかどうかは、よくわからない。 著者は現在、65歳。 健康であるのは「長生き呼吸」を実践しているからだ、と主張している。 ま、そうかもしれない。 が、65歳は、まだまだ、若い。 去年の話だが、それまで病気一つしたことがなかった75歳の知り合いの女性が、いきなりの胃がんで生死を彷徨った。(無事、生還しました) 著者がもし100歳まで、いまのままの健康でいられたら、「長生き呼吸」がほんとに長生きに寄与するのかも、っていえるかもしれない。 が、たったの65歳で長生きを語るのは、わたしにいわせると時期尚早感が強い。 施術をしていると、65歳なんて、まだシニアでもいちばん若手だ。この年代で「やばいな」って感じる人は、少ない。 勝負が分かれるのは75歳以上、かな。感覚的ではあるが。 でも、何が勝負を分けるのかは、よくわからない。 それがわかれば、ノーベル賞だろうけど。 シンクレアが「ライプスパン」で書いていたことだが、人間の平均寿命はどんどん伸びているが、限界寿命は全然延びてない。100歳を超える人は100人に2,3人。115歳となると、1億人に1人いるかいないか。 著者にはぜひ、100人中3人の百寿者になってもらって「長生き呼吸」を証明してもらいたい。
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1分で耳がよくなるなら、と手に取った。 が、そんな安直でうまい方法はない。(読む前からわかってはいたが) 著者考案の7つのトレーニングのひとつをやるだけでも1分以上かかる。 それを気長に1年半ほどやると聴力が改善する(かも)、ということだ。 「3歳の男の子、ある日を境に呼んでも振り向かなくなった。7件回った病院での診断はどこも先天性のものだから治らない、とのことだったが、本書の方法で1年半かけて元通り聞こえるようになった。p40」 聴力は物理的な音波の受容器としての耳と、それを意味のある「音」として認識する脳の働きのふたつからなる。例えば前者は問題なくても、後者に問題があるとこうなる。 「相手の声は聞こえても、別の言語を話しているようで内容がまったく聞き取れない。会議の時にペンを落としたり、コップをテーブルに置いたりする音ばかり拾ってしまい、話している内容がまったく理解できなかった,p32」(30代男性、聞こえが悪くて補聴器を付けたが改善しない事例) 前者は内耳への血流の改善、後者は「聞こえない」と思う心、考え方の改善が必要で、本書で参考になったのは後者の方法だ。 「10種類から好きな音色の鈴を選んでもらい、耳音でそれをじっくり味わって、いい音だな~と脳に記憶させる。もっと聞きたい、と思わせておいて、耳から少しずつ離していく。そうすると、脳が一生懸命聞こうとするので、どうせ聞こえない、と怠けていたのが活性化される。好きな音を毎日、ほんの数分でいいので、耳にすることで脳の働きが高まり、聞こえづらさが解消する。p135」 これは、なるほどな、と思う。 また、こういう方法も紹介されている。 「難聴になったらどんどん音を聞くべし。突発性難聴の患者に阪大病院で行った実験で、ステロイド療法に加えて、聞こえる耳に耳栓をし、聞こえないほうで1日6時間、音楽をきいてもらったところ、3カ月後にはステロイド療法のみの患者に比べて張力の回復が著しくアップした。p125」 これも耳ではなく脳に対するアプローチとして参考になる。 一方でこういう記述もある。 「p78 耳をよくするには腸をよくしろ、と言っている。その理由は腸が耳の健康に必要な、血液の流れにいちばん大きな影響を及ぼすため。腸の動きが鈍ると代謝を含むすべての機能が低下してしまう。大腸小腸を中心とした内臓の働きが衰えれば当然血流も悪くなってしまう。」 なんの生理学的根拠もしめされていないこういう記述をみると なんでやねん!と突っ込みたくなる。 ということで、参考になる記述もあったので、いちおう★3つにしておいた。 参考までに、著者考案のトレーニングをメモっておく。 ◆1分で耳がよくなる今野式7つのトレーニング ①4つの基本マッサージ ・耳シェイク 耳の付け根と前を人差し指と中指で押さえて上下にシェイクする ・耳さすり 耳の周りをさする ・耳の穴刺激 耳の穴に小指をいれて上下左右に軽く押す ・耳引っ張り 耳全体を上下左右に軽く引っ張り、両手の平で耳穴をふさぎ、2秒したらパッとはなす ②エア縄跳び 1分で4-50回、一日500回を目標に ③チョッピング呼吸法 大きく吸って、「フッ、フッ」と、息を少しずつ止めながら吐き出す 3回1セット一日50セット ④お腹ウェービング 右手をおへその右下におき、手を波打つように動かしながら反対側までマッサージ。20回以上。 ⑤頚椎シェイキング 片手の手のひらを頚椎を包むようにあて、上中下優しく左右にシェイク、全体で1分。頚椎の血流改善。 ⑥スプーン熱針療法 70度に温めたお湯にスプーンの柄をいれ、おへその周りを円を描くように温める。腸の血流を改善。 ⑦サウンドメディテーション 昔聞いた楽しく幸せな気分になる音、心地よい音を思いだす。最低1分。聞こえていた記憶を呼び覚ますことで、聴神経を刺激する。聞こえるはずと思うことで実際に体が聞こえるよう働き始める 以上。
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石井直方氏の「筋肉学入門」がものすごく面白かったので、石井直方氏の著作を片端から漁っていて手に取った。 雑誌「ニュートン」の筋肉関係の記事を再編集したもので、石井直方氏は監修。執筆はしていない。 図版こそ丁寧に書かれているものの、内容的には何にも知らない素人さん向けで、この分野に興味のある人にはほとんど常識のようなことばかり。正直いってつまらない。 また、結論だけ書かれていて、説明が少ないので、筋肉学入門のような読んでいてワクワクするような知的刺激にも乏しい。トリビアの域をでない。 なかで、いくつか拾えたものを備忘のためメモする。 p36 トレーニングをすると筋が太くなるのは、サテライト細胞が分裂して筋繊維に融合し、筋繊維の核の数が増えてタンパク質の合成量が上がるためである。 p72 糖尿病に運動がいい、と昔から言われていたが、それは筋肉が糖を蓄える機能があるからだということが近年わかってきた。筋肉中のATPが枯渇すると、筋の糖の取り込みが促進される。また筋肉量が低下すると血糖値の調整機能が低下することも知られている。 いずれにしても、最強につまらない、とまではいわないが、期待外れだった。
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糖質の生理学的な知見ついて調べていて手に取った。 見開きで右が文章、左がイラストやグラフという体裁で、読みやすくわかりやすいのはいいが、やはりわかりやすさを重視したためか、細部の説明がもの足りない。 また、糖質は人体に有害である、という認識からスタートしているので、糖質の話だけでなく、糖質をどのように遠ざけるか、ということにも力点が置かれていて、糖質制限ダイエットや糖質制限メニューなどにも言及していて、焦点がぼやけてしまった。 ひとつ気になった記述があり、それは「プロテインは飲むべきではない」という項。 プロテインをたくさんとると腎臓に負担がかかって腎臓病になる、という理由だ。 小生もタンパク質補給のためにプロテインを飲んでいるので気になって調べてみたが、たとえば1日に1kg(!)以上もプロテインを飲んでいるようなボディビルダーには、確かに腎臓病で苦しんでいる人がいるようだが、通常摂取量の20g/日くらいで腎障害になる例は見つからなかった。 プロテインが危険だ、というなら、危険な量がどのくらいなのかをデータ(あるいは経験でもいいが)に基づいて説明すべきだと思うがどうだろう?本書にも著者のブログ記事にも危険な分量についての記述はない。 ただただ「人工的なものは避けるべき」っていうような説明では、週刊金曜日と同じで、科学というより思想であり、信者以外には役に立たないのにな、と残念に思った。
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音響療法について調べていて手に取った。 心理音響学とは聞き慣れない言葉だが、特別変わったテーマを扱っているわけではなく、聴覚の、とくに閾値についての知見に詳しい。 例えば音程の弁別について、500Hz以下では3.6Hzの違いが聞き分けられるが、それ以上ではだんだん怪しくなってきて、5000Hzを超えると音程はわからなくなるようだ。楽器の最高音が5,000Hzくらいになっていることも、この実験結果をみると「なるほどねー」と納得いく。 音楽療法についての記述は一切ないが、人間が耳と脳で音をどのように捕まえ、解釈しているのか、大変参考になる。原書は1982年の出版でずいぶん古いが、音の聞こえ方という基本的な人間の機能はそうそう変わるものでもない。ひとつのリファレンスとして大いに活用していきたい。
たいへん人気の高い本で、ずいぶん待って借りられた。 しかし、待った割にはイマイチ。 ひとつのお題に5人の専門家がそれぞれの立場から知見を述べるというスタイルだが、紙幅が制限されているからだろう、とにかく、どの説明も足りない。 説明が足りないから、腑に落ちるところまで理解できない。 うわっつらをなでるだけ、目次だけを読んでいる感じで、どうにも落ち着かない。隔靴掻痒とはこういうことをいうのだろう。 いままで小生が読んできたものとは異なる分野の研究者の知見も含まれていて、その点では新しいとっかかりが得られてよかったが、「筋肉疲労は乳酸が原因」などという、もう20年以上前に否定された話が混じっていたりして、全体にどこまで信用できるのか、ちょっと不安もあった。 脳と疲れに関する知見のインデックス、見出し以上の収穫はなかったが、田中伸明氏が紹介していたフリストンの「自由エネルギー原理」は読んでみようと思う。
美肌水の作り方を確認したくて、発案者今井龍弥医師の著書に当たってみた。 ざっくばらんで軽妙な語り口がまるでずっこけ漫才を観ているようでたいへん楽しい。 経営を重視する(せざるをえない)病院にかかると、治る病気も治らなくなってしまうという話を、自身の経験のなかからたくさん紹介していて、それが本書のタイトルになっている。 また、お金をかけずにできるヘルスケアをさまざまと工夫していて、たとえばニキビを治すには使い終わったボールペンの芯を使うとか、口内炎を早く治すには海苔を絆創膏がわりに使うといい、など面白いアイディアも満載。 美肌水もそのひとつで、ホームセンターで売っている肥料用のごく安価な尿素でかんたんに作れて、しかも効果はバツグン。今井医師の真骨頂だ。 大いに参考にさせていただきます。
関節包内矯正という手技がどんなものなのかに興味があって手に取った。 が、具体的にどういう方法なのか、なぜそれで痛みをとれるのか、理論的背景も具体的方法論も記述がなく、ほとんど参考にならなかった。要するに牽引、離開か? 「さかいクリニックグループ」とあるので、整形外科の医師が書いた本かと思っていたが、どうやら柔整師のグループのようだ。「クリニック」は普通、街の小さな診療所につける名称。紛らわしい。
エビデンスに基づいてサプリメントの効果を論じているという評があったので手に取ってみた。 たしかに、それぞれの効果について「こういう報告がある」という記述はある。 逆に、ちまたにいわれているような効果について「証拠はない」という記述もある。 いずれについても論拠となる出典は明記されていないので、それ以上確かめることができないのは残念。 だが、掲載されているサプリメントは製品紹介ではなく、成分主体で網羅性は高い。 また、病気・症状ごとに整理されているので、カタログ的な使い方には向いている。 なぜ効くのか、ほんとに効くのか、あるいはどの製品を買うべきなのか、といったことは自分で調べないといけないが、まあ、それくらいは自分で勉強しなさい、ということであろう。(冒頭にもそう書いてある)
介護現場むけに書かれた口臭対策のテキストだが、前半は口臭の原因について口腔衛生学的観点で詳述されていてたいへん参考になる。 口臭の原因、消化管や肝臓の不具合だTVなどで聴いて、なんとなく信じていた。 が、本書によれば、やはり口臭の9割は口の中の細菌が原因だそうで、腸で吸収されたおならが肺から呼気として出て臭うのは1%程度だという。 口臭の原因は、グラム陰性菌が舌苔で産生するVSC(揮発性硫黄化合物)なので、歯磨きといっしょに舌苔の掃除が重要なポイントとのこと。 またVSCの揮発性をなくすために、塩化亜鉛を配合したうがい薬も即効性があるということだ。(アマゾンで1500円くらいで売っている) 介護の現場向けではあるが、本書の内容は具体的でわかりやすいので、自分の口臭のコントロールにも十分役にたちそうだ。 さっそく舌苔ブラシ(へらよりブラシがよい)と塩化亜鉛うがい薬を使ってみたい。
頭蓋骨を緩める、といってもマッサージや整体ではない。 指先をごく軽くあてて皮膚とその下の筋膜をゆっくり動かすことで、頭蓋骨をはじめ首、腰などの骨格のゆがみを矯正するという方法である。 クラニオセイクラルセラピーといって、20世紀初頭に考案されたかなり古くからある方法のようだ。 砂の上に敷いたラップを、下の砂が動かないようにゆっくり動かすくらいの圧で行う、というから、これまでのどの方法にもなかったような超フェザータッチ。 実際にやってみると、もちろん「キク~」という感じにはならないが、フェザータッチは自分でやっても心地はいい。 筋膜の拘縮が実際にリリースされたかどうかは確認のしようがないが、少なくとも皮膚を軽く撫でることで交感神経を鎮めて緊張がゆるむ、ということはありそうだ。 花粉症に即効性があるらしいので、そのときに試してみたい。
食品物理学、という聞きなれない分野の研究を紹介したもの。 チョコレートを美味しく食べるには、味はもちろんだが、口に入れるとすみやかに溶ける食感=テクスチャ―も非常に大切で、これを決めているのがカカオバターの結晶構造。しかし油脂の分子は非常に小さいので顕微鏡では観察することができない。そこで中性子やX線を油脂にぶつけて、そのときにできる陰(回折格子)を分析することで構造を研究しているそうだ。 かの有名な「Spring8」も使っているそうで、なるほど、食品と物理学はそういうところでつながっているのか、と納得。 食品の油脂としてはほかにマヨネーズとマーガリンも取り上げられている。 身近な食品だけに、食味のよい製品を作るためにメーカーや研究者がどのように取り組んでいるのかがよくわかり、たいへん興味深く読んだ。
マーガリンはトランス脂肪酸が多く含まれる(1%~13%)ので身体に悪い、ということだが、なぜトランス脂肪酸が身体に悪いのかについてはよくわからない。 2013年にアメリカの食品医薬局(FDA)が大規模な調査を行ったところ心臓疾患との関連が判明したということで、ここからトランス脂肪酸への総攻撃が始まったらしい。 各国でのいろんな調査で「ほぼ黒」はまちがいなさそうな感じだが、しかし、本書の研究事例は疫学調査ばかりで、マウス実験による直接的な証拠がない。さらに心臓疾患だけではなく、乳がんや不妊、糖尿病、子宮内膜症、うつ病、認知症、発達障害などなど万病の原因とされているが、生理学的な機序はさっぱりわからない。 また全体にヒステリックな書きっぷりもあって、ちょっと辟易させられた。 トランス脂肪酸の「毒性」について生理学的な知見を期待していたが、期待外れだった。
事典としての情報量はさほど多くはありませんが、これだけたくさんの精油を一挙に掲載した書籍は珍しい。 スイートオレンジ、ビターオレンジ、ブラッドオレンジがそれぞれ別の精油として独立して載っている本は初めてみました。 またすべての精油に原料植物の写真ではなく、イラストが付されている点もたいへん参考になります。(植物は写真ではかえってわかりにくい) 一点だけ残念なのは、香調でグルーピングされていて、あいうえお順になっていないこと。 知りたい精油がすぐに引けません。 巻末に効能表があって、そこから手繰ることもできなくはありませんが、事典としてはやはり使いにくいですね。 この点を差し引いて★4にしましたが、内容に比べて価格も安めですし、一冊持っておいても損はないと思います。