絵画・書・陶磁器・彫刻など近現代美術品や愛好家。歴史小説やドキュメンタリー小説を愛読。
坊っちゃんのモデルと言われた主人公の波乱に満ちた人生に加えて、夏目漱石や島崎藤村、瀧廉太郎などとの知られざる逸話が描かれた興味深い内容である。 それ以上に、明治時代の厳しく生々しい教育の実態や時代のエポックメーキングな出来事とその背景が丁寧な調査と考察によって表された興味深い一冊である。
作者が中国赴任中に骨董市で発見した写真に写った日本軍人の調査と遺族を捜索するドキュメンタリー小説である。 更に、その写真に写る人物の家族や息子が終戦直後の、北朝鮮からの壮絶な逃避行の体験も書かれている。こうした体験をした満州や朝鮮からの引揚者は多いと思うが、戦争の被害は統計数字ではなく一人一人の生身の人が体験したリアルな実話としてとらえた点は、戦争のもたらす悲劇を知る上で意義ある書であると考える。