さんの書評2025/12/06

『ジャニーズのすべて』(平本淳也 著)を読んで

ジャニー氏によるジャニーズJr.への性暴行疑惑が、なぜ長年にわたり公にされなかったのかを知りたいと思い、本書を手に取った。 あくまで私個人の感想であるが、本書から読み取れたのは、ジャニー氏によるジャニーズJr.への心理的支配の構造、芸能マスコミとの密接な関係、そして世間の関心を逸らすためのさまざまな演出や仕組みが存在したと指摘されている点である。その内容は、率直に言って強い不快感を覚えるものであった。 現在はコンプライアンス意識が以前よりも重視される社会になっており、同様の事態は起こらないと信じたい。しかし、少なくとも四半世紀前にこのような構造的問題が現実に存在していた可能性があるという事実は、私たちが知っておく必要があると感じた。いずれにせよ、このような出来事は二度と繰り返されてはならない。 また本文中には、「夢とは犠牲を伴うもの、そして利用されるものだ」という趣旨の一文があったが、これはジャニー氏の問題に限らず、他の社会的状況にも当てはまるのではないかと感じた。例えば就職氷河期において、派遣社員として働く人々が、将来的な正社員登用の可能性を示唆されることで過度な業務を引き受けさせられる、といった構図にも通じるものがあるように思われる。 「夢」という言葉は人を前向きにする一方で、時に搾取や支配の手段にもなり得る非常に危ういものなのだと、この一文を通して強く感じた。

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