さんの書評2025/12/05

共感という病(永井陽右)を読んで。

共感という概念に興味があり、タイトルから共感のネガティブな側面が紹介されると思い読んでみた。本書は、共感の負の側面、その向き合い方、紛争地での実践(戦略的対話)という構成で、非常に腑に落ちる内容だった。 特に印象的だったのは、過度な共感が承認欲求の肥大化につながり、異なる意見に対する攻撃を生むという指摘。この構造を読んで、カルト宗教の勧誘や、昭和的な企業文化の同質化圧力を思い出した。自分自身もジョブローテーションを当然のものだと刷り込まれた経験があり、共感が“正義”として暴走する構造に強い納得感があった。 本書が示す共感に振り回されないための向き合い方は次の三つ。 1. 自己理解から始めること 2. 物事を白黒つけすぎないこと 3. 共感されなくても、つながっていなくても大丈夫と理解すること 特に三つ目は、共感の強要が目立つ現代社会に対する重要な視点で、個人的にも心が軽くなった。 また、著者が紛争解決の現場で行ってきた「戦略的対話」の話も興味深い。相手を説得するのではなく、理解することに重きを置くコミュニケーションで、わかりあえない相手とどう向き合うかについての実践的な示唆に富んでいる。 全体として、共感の負の側面と向き合い方をわかりやすく説明し、さらに紛争地の経験から語られる共感の話も非常に面白い。読者を飽きさせない一冊だと感じた。職場で共感されにくいと言われがちな人と仕事をする時にも、この学びを活かしたいと思う。

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