さんの書評2025/12/10

『休むと迷惑』という呪縛を読んで

働き方改革が推進されているにもかかわらず、長時間労働が依然としてなくならない現状について、その原因を日本社会に深く根付いた「休むことは悪いことだ」という刷り込みに求め、その構造的問題と対策を、学校教育の段階から講じるべきだと提唱している一冊であった。発想としては非常にユニークであり、特に学校教育改革に関しては共感できる部分も多かった。一方で、企業が実際にどのような対策を取るべきかについての記述は、やや物足りなさを感じた。 とりわけ、産休・育休・介護休暇に関する議論の中で代替要員の確保が提案されていたが、①どのように代替要員を確保するのか、②代替要員は正社員なのか、それとも派遣社員なのか、③休暇取得者の復帰後、代替要員として働いていた人の処遇をどのようにするのかといった点について、もう一歩踏み込んだ議論が欲しかったと感じる。 本書を通じて新たに学んだ点として、「自己研鑽」が賃金の発生する労働に該当するかどうかが争われた事例が紹介されていたことが挙げられる(2002年トヨタ自動車・内野健一氏過労死事件、2022年甲南医療センター・高島辰吾医師自殺事件)。前者については、自己研鑽であっても実質的に業務と不可分であるとして、賃金の発生する労働と認められ、過労死と判断された。この事件については、個人的にも今後さらに深く調べてみたいと思う。 また、本書では自己研鑽の問題について主に医師を中心に論じられていたが、同様の問題は他の業種でも発生し得るものであり、その点についても改めて確認・検討する必要があると感じた。 総じて、本書が提示する「教育というアプローチから休み方を学び、それを社会に実装する」という視点は非常に興味深いものであった。しかしながら、代替要員の問題に代表されるように、実務面で詰めが甘いと感じる箇所も見受けられた。そのため、教育の立場だけではなく、実際の労働現場に精通した人々など、複数の視点からこの問題を継続的に検討していく必要性を強く感じた。

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