さんの書評2023/04/211いいね!

中身は素晴らしく強力にお勧めできる本なのですが、一点だけ文句をつけるとしたら日本

中身は素晴らしく強力にお勧めできる本なのですが、一点だけ文句をつけるとしたら日本版の本の題名です。日本版は「デマの影響力」ですが、原題は「THE HYPE MACHINE How Social Media Disrupts Our Elections, Our Economy, and Our Health- and How We Must Adapt」です。 題名だけに惹かれて「デマの影響力」を知りたい人はがっかりするかもしれません。読み方のヒントになるかどうかわかりませんが、読み始める前にまず119頁の[図3-3]ハイプ・マシンの三要素の図を頭に入れておくと、この本の中で頻繁に取り上げられるハイプ・マシンに関してイメージが出来やすいと思います。 内容に関してはネタバレになりそうなので詳細に書くことは控えますが、筆者のシナン・アラル氏はMITの教授でありながら、facebook等のSNSメディアとの研究を通じて分かったことや、日本人にも身近な事例「アメリカ大統領選挙」「クリミヤ侵攻」等日本人にも馴染みの深い事例を用いて説明してくれるので、分かりやすくかつ説得力があります。加えて翻訳本にしては読みやすいので、帯に書かれている言葉を使うと、ビジネス書なのに『スパイ小説のようでもありサイエンス・スリラーのよう』でもあります。 筆者はSNSの様々な問題点や大衆に与える強大な影響力、可能性や危険性の両面を挙げながら、最終の第12章で「より良いハイプ・マシンを作る」ためにはどのようにすべきかという結論を書いています。私もこの結論には納得し、共感もしました。しかし、この本が出版された後にも、SNSやそれを取り巻くデジタル環境は常に変化し続けています。twitter社はこの本の中でも登場するイーロン・マスク氏に買収されジャック・ドーシー時代のtwitterとは大きく変わる可能性がありますし、ChatGPTやBing AIのような対話型AIも出現し、それらの利用を通じて大衆の意思決定のみならず生活全般が影響を受ける可能性もあります。私たちは、この本が提供してくれた知識や洞察を活かして、自分自身のメディア・リテラシーを高め、デジタル社会の市民として責任ある行動をとる必要があります。 今後もデジタル環境が広がり続けていく時代の中で、この本はまさに今読むべき本だとお勧めします。ソーシャル・メディアの仕組みや影響力を理解し、ハイプ・マシンがより良い方向に活用をされるためのヒントや方向性を得ることができます。

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