さんのコメント2023/06/14

義父と結婚させられそうになり、故郷を捨てて逃げてきた少女だったルーが転がり込んだキャバレー「グランドシャトー」を舞台にのし上がる一代記と言えるが、その実、これはルーの心に常に寄り添っていた「真珠」の物語と言えよう。真珠ねえさん、観音菩薩のような人だなぁ。一見地味な性格ながら、人の心の痛みを癒すことのできる人だからこそ、常に見世ナンバーワンを維持していたのもうなずける。家族を失ったルーにとっても、帰ることのできる長屋に住む唯一の家族だったのだろう。それも真珠自身が戦争により、計り知れない痛みを抱えていたからこそなのだ、ということがだんだんと明らかになる終盤に差し掛かるところは、通勤の電車の中で読んでいたのだが、涙が止まらなくて困ってしまった。

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