コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2025/12/08
『戦争シミュレーション』を読んで 本書はPIVOTで取り上げられていたことをきっかけに関心を持ち、手に取った一冊である。本書は、第一次世界大戦期から現代に至るまでの各時代において書かれた「日米未来戦記」を網羅的に取り上げ、それらを整理・分析した作品である。 読み始めた当初は、SF作品の紹介が中心であるという印象を受けた。しかし本書は単なる作品紹介にとどまらず、取り上げられる戦記作品を、評論としては「楽観型」「警鐘型」「文明論」「誠心論」「客観型」に、小説としては「現実型」「新兵器活躍型」などに分類し、それぞれを時代ごとに位置づけて論じている点が特徴的である。 特に印象深かったのは、日米戦記の起源が、第一次世界大戦期においては日本とアメリカではなく、ヨーロッパで形成された思考枠組みに由来しているという指摘であり、これは今回初めて知った視点であった。 全体的な感想としては、紹介される作品数が非常に多いため、著者が重要な箇所を的確に抽出し、当時の国際情勢や社会背景を踏まえながら、日米戦記がどのような形で構想されてきたのかを示している点に、本書の意義を感じた。一方で、各時代ごとに内容が凝縮されているため、正直に言えば、時代別に一冊ずつまとめたシリーズとして読めたなら、さらに理解が深まり、より面白く読めたのではないかとも感じた。 また戦後の日米戦記の中には、現在の米中対立の構図の中で、日本が再び大国間対立に巻き込まれる可能性を示唆する作品も存在しており、フィクションでありながら現実への示唆性の強さを感じさせられた。最後に、本書で紹介されていた『沈黙の艦隊』などの具体的な作品について、今後は実際に自分自身で読んでみたいと思った。
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