さんの書評2016/05/21

第一級殺人弁護

中嶋博行氏の「司法戦争」を読んで中嶋さんにはまりましたが、その一環として買ったこの本は中嶋さんの本の中で一番お気に入りです。弁護士、というと対外小説では悪徳弁護士が登場し、悪いイメージしかないのですが、この本の弁護士はそんな要素を一つも含んでいない、つまり豪邸に住んでいるわけでもないし威張り散らしているわけでもないし・・・どちらかというと僕たち一般のサラリーマンのような感じ。具体的には、毎月末にはリース料、家賃、事務員の給料と、支出が多いにもかかわらず毎日引き受けるのはお金にならないものばかり。普通、一番の収入減になる企業の「顧問」は、たった一つ、そしてそれは同級生だった人が作った正体不明の会社。顧問料は毎月気が向いたときに少額払われるだけ。お金にならない事件には首を突っ込まないでおこうと意識しているにもかかわらず、京森弁護士の優しさや正義感からいつもやってしまう。そんな一般人に近く親しみの持ちやすい主人公京森弁護士は、「不法在留」・・・不法在留者として捕まった中国籍のガクと接見した京森は、彼から未払い賃金の取り立てを頼まれる。が、京森が相手方の専務と話した直後ガクが殺されてしまい… 「措置入院」・・・市の清掃職員を突き飛ばし殺害した岡野と接見した京森だが、彼の話は支離滅裂。調べてみれば岡野は精神病棟からの脱走者だった… 「鑑定証拠」・・・殺人罪で起訴され自白した村岡。ハメられた上、自白も強要され自身は無実だと主張する。資産家の父親は死期にあり弟は何やら画策しているようで… とてもすっきりした。この中で一番のお気に入り。 「民事暴力」・・・銀行の支店長から面会を求められ、大口の仕事かと浮かれる京森だったが、その支店長が殺されてしまい… 「犯罪被害」・・・抵当物件の占有屋と立退料を支払うことで交渉成立させた京森。しかし占有屋が凄惨な死体となって発見され… 加害者は被害者となり、残された遺族は…

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