難民なんて遠くて縁のない世界の話と思っている人にオススメ
「難民」ときいて、思い浮かべるのはインドシナのボートピープルだろうか、
それとも中東やアフリカ各国から欧州へ押し寄せる人々だろうか。
日本に難民としてやってきてもなかなか認定されないというニュースがある。
世界のあちこちの政情不安定な国から逃げ出さざるをえない難民は数えきれない。
そういう話を聞いても、「隣の国から逃げこんでくる」ような難民にであうことのない島国では
難民なんて遠い世界の出来事、自分には縁のないひとごと、と思っているかもしれない。
国の保護を失って、流浪の民となるのはどういうことなのか。
わたしたちにとっていちばん身近なケースは、70年前の満州からの引き揚げ体験記ではないだろうか。
ここにあげた、縁あって満州で暮らしていたふつうの家庭の母親や少女が
過酷な環境を生き延びて書いた本は、戦争についてだけでなく、難民について考えるときに、
そして人が生きるということを考えるうえでも、とても参考になると思う。
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本を読むことも一種の〈移民〉体験だ。なぜならそれは異質な他者の生を想像して生きることだから。
読むたびに、また別の生が付け加えられ、僕たちの生はますます豊かになる。
(小野正嗣:「思考のプリズム:僕たちはみな<移民> 境界線を跳び越えよう」、朝日新聞2018.1.17夕刊)