元祖・漱石の犬
新婚間もない熊本時代の漱石夫妻の間には、鏡子夫人の流産を契機とした緊張の高まりがありました。その緊張関係を緩和する役割を託されたと思われる「小さい犬の仔」の存在について検証してあります。
夏目漱石あるいは漱石夫妻に関心のある方にオススメ
漱石の作品の大部分は、自叙伝的小説「道草」はもとより、漱石の実体験に基づいて書かれています。したがって、漱石作品を鑑賞する上で、漱石の生涯を知っておくことは重要と考えられます。その筆頭に挙げられる本は、漱石の全生涯を詳細に調査された荒正人著「増補改訂漱石研究年表」であることは間違いありません。さらに作家以前の漱石を知るには、未だ不明な点も多い熊本時代の漱石も重要です。熊本時代全般を詳しく記述されたのが、原武哲著「喪章を着けた千円札の漱石」です。特に、熊本は漱石夫妻が新婚生活を始めた場所ですが、夫婦関係、とりわけ、鏡子夫人の流産を契機とした緊張関係の高まりが「道草」にも詳しく記述されています。緊張関係の高まりは、鏡子夫人の解離性障害(旧名ヒステリー)の形で現れ、漱石もそれを容認していましたが、万が一にも重大な事件や事故に発展することは恐れていました。近刊「元祖・漱石の犬」では、漱石、あるいは漱石夫妻が、その夫婦間の緊張関係の緩和を託した可能性のあるの存在として「小さい犬の仔」が初めて紹介されています。夫妻が飽託郡大江村401番地の家(第三旧居)で暮らした頃に撮影された一葉の集合写真など、資料は限られていますが、人と犬の関係について考えるという視点から詳細に検証されています。9人の人が「いいね!」を押しています。
閲覧回数:784回、公開:2012/08/11