エロ本読んでクラスの女子に尊敬されたい男子中高生にオススメ
ぼく:ぐへへへへ、ぜんこくのだんししょくん。ここまで読み継ぐとはお主もなかなかエッチよのう
あなた:いえいえ。上様ほどではござりませぬ、ぐふふ
ぼく:いやいや、みなまで言わんでよい。男に生まれたからには一度は思うものよ。「エロ本で勉強できたらなあ」、と。予も元服前には講武所でモンモンとしておった。あげくついた渾名がエロ奉行よ
あなた:これはこれは、ぐふふふふ
ぼく:苦しゅうないぞ、ぐへへへへへ
これって青春の情動が煮凝っただけの甘い夢? 淡い妄想? はあ、俺マジ何考えてんだろ、勢いにノせられてバカバカしい。撤収撤収、宿題でもやるべ、そうするべ……。
いやいや諦めるにはまだ早い! そこな少年、きみは大事なことを見落としておるではないか。いわずもがな全人類の約半数は男なのだ。資料集をひもとくまでもなく、上様同様、作家も批評家も教育委員も国語の先生も、その多くがムッツリーニだろうが大平助平だろうが、月月火水木金金年中無休で発情期の、自称万物の霊長「ニンゲン」という奇妙なドーブツのオスなのだ! ……これがどういうことか、後は言わなくてもわかるな?
というわけで、オイシイ思いをしながら教養を身につけよう。紹介した本は教室で堂々と読んでもだいじょうぶ。しかも、女子に聞かれたらアタックチャーンス。美に酔い痴れる恍惚の表情で「じつは古典が好きなんだ」「フランス文学に興味があってね」「ナボコフは誤解されがちなんだよなあ。発表当時も的外れの批判が相次いでさ。そういえばこのあいだ新訳が出た『カメラ・オブスクーラ』って知ってる? この傑作の原型と言われてるんだけど……」とでも言っておけば、大学2年生みたいな迸る君の知性に気になるあの子もイチコロだ! 「ToLoveる」の回し読みなんかでバカにされてるバヤイではないのだ! 夜と文学の暴れん坊将軍めざして、いざ書店! 成敗っ。
ぼく:それぞれ見咎められた時のうまい言い抜け方は、自分で考えるのだな
あなた:ううーん、いけずーぅ
ぼく:この著者とこの著者はライバル・愛人・師弟・私淑関係とか、時代背景、文学史上の位置づけなんかも雑学としておくと口説き文句が増えるぞ。じじつ読めば読むだけ読解力は上がるし、量をこなせば学校の国語のテストなんて、マジメな話、屁でもなくなるはずだ
あなた:いーつもすまないねえ
ぼく:おじいさん、それは言わない約束でしょ。では、ばいにゃ
(※ ほんとうに「あの子もイチコロ」かは保証ありませんのであしからず。このレシピは全編エンターテインメントでおおくりしてるんだってばよ!)
(※ お気づきのかたもいらっしゃると思いますが、レシピ名は斎藤美奈子「国語教科書は悲劇がお好き」(「早稲田文学 3」所収)のもじりです。教科書に乗った文章はなぜ途端につまらなくなるかを、独特のペーソスに満ちた軽妙な語りで見事に批評してみせる逸品です。ご興味があればお近くの書店または図書館へどうぞ)