時間術ではなくあくまで時間「道」についての本。「靴下は全部同じ種類のを買えば、左右の組み合わせを探してイライラする時間がなくなるよ!」とか「やることリストは全部リマインダーに登録してすきま時間をなくそう!」とかの具体的ライフハック「術」は皆無(実は1つだけ書いてあるのですがそれは割愛)。 あくまで、仕事をしていない「自分の時間」をどうとらえるか、その時間で何をすべきか、なぜそうすべきかを伝えた本です。 とはいえ、「仕事をしていない時間」イコール「自分の時間」ととらえていること自体が、すでに紳士の考えですよね。家で子育てや家事や介護やらに追われている人は、読むと憤死するかもしれません。髪を切りに行く時間さえないお母さんや、平日は仕事漬けで休日ごろごろしないと過労死しそうなお父さんもたくさんいるはず。 それに、自分の時間で何をするかもすごい。要は本を読んだり思索にふけろうよという話なのですが、その理由は転職のためのスキルアップでも仕事の激しいストレスを解消するための瞑想でもない。自らの魂を高めるため、善き人であるために、自分を成長させていこうじゃないかというのが著者の提案なのです。TOEIC対策やらホットヨガやらは眼中にないわけです。ディケンズすら「読みやすいからだめ、もっと骨のある難しい本を読め」と言う始末。さすが紳士。 それでも自分はこの本をおすすめしたい。 なぜなら、仕事をしていないプライベートな時間がいかに貴重なものか、その価値をはっきりと教えてくれるから。 家に帰っても人間関係でうじうじ悩んでいる場合じゃない。通勤中にぼんやりしてる場合じゃない。だらだらテレビ観てる場合じゃない。 未来が不安だから、自分が劣っている気がするから空いてる時間になんでもつめこむのではなく、こんなに大事な時間をもっと大切なことや大切な人のために使おう、と思わせてくれる貴重な本です。 紳士の人も紳士でない人も、ぜひ一読をおすすめします。 でも、1週間を6日として考えるのは無理。1日は掃除と洗濯で潰れてしまう……。
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たくさんの星が火花のように飛び散って、気持ち良く目が眩むような感覚を味わえる本。 外国語を学び始めたころのみずみずしい喜び、シンプルな単語ひとつひとつにいちいち驚いたり変な発音に笑っちゃったり、辞書をひきひき調べていくと突然わけのわからない言葉の羅列が意味のある文章に変身してきらきらと光り始めるあの感覚を取り戻せる本。 くすりと笑ったり、へえとうなずきたくなるような単語が集められているので、夜寝る前に読んでリラックスするのに最適。大きさや厚みもちょうど絵本サイズなので、ベッドで寝転びながら読むと、子供のころに戻ったような気持ちになれる。大人の読み聞かせを卒業してひとりで知的冒険をはじめるころのような、わくわくして、世界の広さを知った自分が少し誇らしくなるような。 そういえば、昔BBCのニュースで、世界で最も翻訳が難しい単語ベスト3という記事が出ていました。 1位はチルバ語の"ilunga"、 2位はイディッシュ語の"shlimazl"、 そして3位は大阪弁の"Naa(なあ)"だそうです。 Congo word 'most untranslatable'<http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/3830521.stm> 日本人の私ですが、「なあ」の意味は正確にわかりません。 でも、だからこそ、言語は美しいのでしょう。
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