コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法 名和 高司(著)☆4 正解⇒https://www.biz-knowledge.com/entry/surpass-consultant マッキンゼーとボストンコンサルティング、両方でコンサルティングとして働いていた著者による二つの会社が用いている問題解決手法を目的から紐解きつつ、基本的な分析手法である「PEST」、「3C」、「SWOT」など定番フレームワークのの業務への落とし込み方と問題点を指摘。 また更にこれから必要となってくる価値創造について、どのように落とし込んでいけばよいのか?を指南している。 著者はコンサルは今後、AIに取って替わると言ってはばからず(ペッパー君がコンサルになる前に)、だからこそ、社会課題解決まで持っていくことが価値創造であり、コンサルの真の姿であると説いている。 各章は最後にまとめがあり、非常にコンサルらしいわかりやすい文章構成で、勉強になる。 そもそもの課題設定が肝で、そのピポットが重要である点、身に染みる話である。 第一章 問題解決力のまとめ ・問題解決は総合芸術である ・「問題だ」と思われているものは、現象にすぎず、本質的な問題ではない ・問題解決には、分析力に加えて、構築力がカギとなる ・そのためには、真理に迫る論理力だけでなく、心理に迫る洞察力が必要 ・答えはひとつではない。実行されてはじめて答えにたどり着く 第二章 課題設定力「論点思考」のまとめ ・問題の本質(チョークポイント)についての仮説から出発する ・why?を5回で、問題の本質を深堀りする ・「やるべきこと」を見つけるのではなく、「why not yet?」(なぜできていないのか?)を見極めることがカギ ・問題箇所に集中するのではなく、ソリューションスペースを広げる ・問題を機会に変えることで、異次元の可能性につなげていく ・事実に推論を加え、推論のあとにレコメンがあって初めて、提案としての価値が生まれる 第三章 仮説構築力「仮説思考」 ・「既顧客」ではなく、「未顧客」に注目する ・時間軸を取り込むことで、トレードオフをトレードオンに変換する ・あえて「OBゾーン」に打ち込み、「聖域」に踏み込む 第四章 インパクト力「インパクト思考」 ・課題に丸ごと取り組むのではなく、サブイシューのかたまりに細分化する ・経営上最重要なインパクト指標はボトムライン(収益) 第五章 フレーミング力①MECEとロジックツリー 第六章 フレーミング力②定番フレームワーク 〇PEST分析> マクロ環境を整理するには効果的だが、そこから新しい洞察が生まれることはない。あくまで戦略を練り上げるためのスタートライン 〇SWOT分析> 当たり前の「強み×機会」や「弱み×脅威」ではなく、「弱み×機会」と「強み×脅威」に注目し、「弱み×機会」←M&A、アライアンスが有効。「強み×脅威」←自己破壊を狙った別組織で対抗する ◎3C分析>市場を顧客、競合、自社の軸で分け、独立関数として分析しても意味がない。三者の重なりと動きに注目することで、市場のダイナミズムを洞察できる。現状分析ではなく、将来予測こそが戦略立案の肝となる。ブルーオーシャンは決して長くは続かない。したがって、レッドオーシャンでも勝ち抜くパワーと、新たにブルーオーシャンを生み出す努力の両輪が必要となる。 ▼5F分析>現状の整理にはなるが、それを戦略の前提にしてはならない。非連続な成長を目指すうえでは、顧客、サプライヤー、競合などと「競争」するのではなく、いかに「共創」するかという視点が求められる。 ▼バリューチェーン>自社活動に限定して捉えてはならない。顧客や産業全体の視点から幅広く捉え直し、「足すもの」、「引くもの」「自らやること」、「他人に任せること」をクリエイティブに設計し直す 〇アンゾフの成長マトリックス>市場と商品を2軸に取り、それぞれ既存と新規に二分することで、2x2のマトリックスができる。ただし「新×新」領域に一気に飛ぼうとすると、強みがないので確実に失敗する。片方の軸を既存に置き、もう片方の軸を新規にずらすことでイノベーションの成功率が高まる。更に3x3のマトリックスにすることにより、中間に「渡り廊下」を置くことで、進化の「けものみち」が見えてくる 第七章 分析の切れ味 第八章 ストーリーとしての戦略 〇プレゼンは論破より共感がカギ。危機感より使命感に火をつけることが重要 第九章 大前研一の「ワープする脳」 第十章 IQ・EQ・JQと「真善美」 〇何が善かを見極める力こそが、人間がAIに勝つ最後の砦 〇右肩上がりの成長が限界を迎えつつある今こそ、これまでのロジックを不利かがしてすぐに正解を求めるIQではなく、何が善かをじっくりと見極めるJQが求められる。
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