やまてるさんの書評 2015/01/07 3いいね!
「みんなが誰かを幸せにしているこの世界」 9人の日常が、かすかにつながる短篇集。 何気ない日常が、キラキラ輝いた瞬間に変わる。 パッと明かりが射したような晴れやかさにあふれる喜多川ワールド満載の本。 人生いつもうまく行くとは限らない。 どちらかと言うと、つまらない日常。 自分の才能や素質、生い立ちや境遇などなど、 不平不満をもらし、苦悩しながらの毎日だ。 そんな鬱憤も、この本を読むと晴れやかになる。 第7話「夢の国」で、中国から出稼ぎに来た張君が言う。 「大事にするから好きになる」 一見逆に思えるが、これこそが、日本人の美の感性。 家族や道具、学校や職場、そして、この国、日本。 ゴミを拾う、ただそれだけでも、勇気がいること。 そして、行動を起こすことで、晴れやかになれる。 第1話「ユニフォーム」での、小さくて非力な野球少年。 彼のそのファイトあふれる姿で、誰かの心を打つのだ。 各短編の登場人物は、けして、ヒーローやヒロインではない。 けれど、ささやかな存在の自分が、誰かを幸せにしているかも しれないと思えるようになる。 つまらない日常が、輝いた日常に変わる。 些細な事で、人は勇気や希望をもらい、幸せになれるのだ。 喜多川ワールドに、またも、笑顔になれた。
この書評がいいと思ったら、押そう! » いいね!