浅草福井町の千太郎長屋に住む「おせん」は、梅鉢屋(うめばちや)という貸本屋を営んでいます。といっても店があるわけではなくて、本を風呂敷で担いでお得意さんの所を廻るという、かなり体力のいる商売で、江戸中でこんな仕事をしている女はおせんしかいません。 盗品も扱うという噂もある同業者の隈八十のことを、最初の頃はかなり嫌がっていたのに、話が進むにつれて、こんな奴だからこそできることもあると割り切って付き合うようになったり、お得意さんの好みの本を探し回ったり、おせんが少しずつ成長していくところがいいですねぇ。 幼馴染で青菜売りの登がおせんに「嫁に来ないか」と声を掛けてくるけれど、適当にあしらっているところがいかにも江戸っ子っぽいんです。 江戸時代の古本屋は、取り扱う本の中にご禁制の艶っぽいものも含まれるので、そこいらの扱いが難しかったというのを初めて知りました。犯罪がらみの話の中で、かなり危ない目にも合ってしまうけれど、そんなことを気にしていたらこんな商売なんかできないよと言うおせんは、なかなかカッコいい女性です。続編もあるといいなぁ。
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