さんの書評2022/03/282いいね!

アメリカ合衆国は連邦としてパンデミックに対処できなかった

 アメリカがパンデミックに国家として備えていたかどうか。ブッシュが大統領だった時、読んだ本に触発されてプランを作るよう指示しできたそのシナリオはCDC(疾病管理予防センター)にまで渡った。が、政権交代後またなくなった。  結局パンデミックに対して連邦してできることはなく、新型コロナウイルスに対しても勇気ある人々が個人的つながりを使って奮闘しただけ。CDCは論文を書くためのデータをほしがるのみ。  マン渓谷での山火事の事例。7人?中ひとり生還したドッヂさん、(その名のとおり)下から炎が迫る中急峻な崖を登って逃げなくてはならない局面、前方にあえて火を放ちその中へ駆け込んだ。周りの人はその行動の意味を理解せず続く者はなかった。灰の上に立ち彼ひとりが生き残った。火をもって火を制すという方法とのこと。この例をひくほど並外れた科学者たちの活躍が詳細につづられる。  アメリカ合衆国全土を対象にした統一的なデータ集積や対処法についての情報共有システムができていなかったことには驚かされた。けれども、いつ来るかわからないものへの備えにお金をかけることに対して有権者がどう思うかをおそれる為政者の事情も想像するのは難しくない。日本でも似たような構造なのだろう。 『マネー•ゲーム』の著者とのことで、構成がうまくページをめくる手を止められない。実際の悲劇を知るだけに複雑だが、エンタテインメントとしても本書は秀逸。

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