夏休みにコミックと併せ読みたい原作小説
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阿房列車―内田百けん集成〈1〉 ちくま文庫
内田 百けん
センセイの鞄 (新潮文庫)
川上 弘美
人間失格 (集英社文庫)
太宰 治
阿房列車 1号 (IKKI COMIX)
内田 百けん
センセイの鞄 1 (アクションコミックス)
川上 弘美
人間失格 1 (BUNCH COMICS)
古屋 兎丸
小説とコミックどっちが好きかときどき悩むひとにオススメ
何年か前に、子嚢急くの冒頭をコミック化してそのまま小説本編につなげる、みたいな企画をたてていたことがあって、あれこれの理由で二社で流れつつもまだやりたいなあと思っているのですが(どこかやりたい会社ないです?笑)、そうこうするうち、小説全体がコミック化されたり翻案される姿を目にする機会が多くなってきました(似たこと考える小説好きは、そりゃあいるよなあ、としみじみ)。
でも、コミックでぜんぶ読んで終わり、じゃもちろんちょっと寂しいので、原作と併せ読むとおもしろいコミックを選んで、その原作をまずは並べてみました(下段がそのコミック版です)。小説とコミック、物語の構造はもちろん同じなのですが、小説では文字で描写されいる細部がコミックでは絵になるので、いろいろな発見があります。たとえば『阿房列車』は、原作の小説(正確には随筆と言うべきかもですが)だといささか気難しげだけれどおもしろい語り手(百間)が、コミック版では一気にコミカルなじいさんになりますし、背景に汽車が細かく描かれることで「鉄マンガ」風味が強くなる。逆に『センセイの鞄』では、川上弘美の小説ならではのほのかなエロティシズムが谷口ジローのあの絵で一気になくなって(その意味では、おもしろさを削ってしまってもいるのですが、そのぶん違う魅力が足されています)、そのひといきぶりがおもしろい。
小説とコミックは、ぜんぜん違うメディアです。そのことが、こうしてならべてみるとよくわかる。以前、知り合いの図書館の司書教員さんが、「ラノベを置かないと図書館に子供がこない」と苦笑してましたが、たとえば森見登見彦の『新釈 走れメロス 他四篇』(これ、タイトルも昭和の文庫のパロディですよね)と太宰を抱き合わせで貸し出したりすれば(いま借りるとこっちもついてくる!みたいに)、読み比べの快楽に気づいてもらえる、かもしれませんね。
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閲覧回数:3657回、公開:2010/07/04