姉妹のかたち
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地図 初期作品集 (新潮文庫)
太宰 治
グロテスク
桐野 夏生
杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)
古井 由吉
ミステリアスセッティング
阿部 和重
姉妹関係に興味のある20代にオススメ
姉妹とは、ときに仲よく、ときに険悪、悪口を言っているかと思えば、大事な秘密を共有している……、周りから見れば「?」なものかもしれませんが、実は当の本人たちにもよくわからないものなのです。今回は、二人姉妹の長女が「二人姉妹」が登場する小説をご紹介します。姉妹あるひとは、一歩離れて自分たちの関係性を考えるきっかけになる、かも。
(1)タイトルのとおり、律子と貞子(仮名)という姉妹とひとりの男を巡る短篇。家業や外聞を気にするまじめで我慢しいな姉と無邪気で人懐こい妹、という典型的な姉妹のかたちには多くのひとが頷けるはず。しかし、ラストの太宰の女性観には、人によって賛否がわかれそうです。
(2)は美しすぎる妹を持った普通の姉が語り手の長篇。その美貌から娼婦として生きた妹と、一見さえない姉、彼女たちの顛末とは……。姉妹間の執着や妬み、憎悪、そして羨望というどろどろの醜さがグロテスクに描かれます。姉妹あるひとは、既視感に怖さを感じながらもページを繰る指をとめられないはず。
(3)で描かれるのは、(2)とは反対に、妹から見た姉の姿です。妹は姉を否定しながらも彼女が与える規定から逃げられないものなのかも、と思わされます。谷底で出会った男と妹の病的で瑞々しい恋愛もよみどころの本作は、いまや絶版となっていますので、ぜひ図書館で。
(4)上で触れたように地味な生活力には勝る姉ですが、案外妹の方が現実的で、姉の方が夢見がち、というのもよく聞くはなしかと思います。本作の妹は、姉が吟遊詩人になるという夢を語ればシビアにツッコミ、男に騙されたとわかれば復讐し、とかなりかっこいいのですが、物語の前半でフェードアウトしてしまいます。対して姉はラストのラストまで夢見がちですが、それゆえに小さな奇跡を起こします。典型を否定することなく遂行してみせる姉の小さな逆転劇。
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閲覧回数:1500回、公開:2010/07/04