目次
はじめに
第I部 検証を終えて
こうのとりのゆりかご検証会議・最終報告の概要/柏女霊峰
こうのとりのゆりかご検証会議・最終報告を受け取って/蒲島郁夫
こうのとりのゆりかごに寄せて/潮谷義子
こうのとりのゆりかご検証会議・最終報告を受けて/幸山政史
「こうのとりのゆりかご」が投げかけたこと/奥山眞紀子
驚き、悩み、そして希望を託して!/高木絹子
ゆりかごの要らない社会を!/田中昭子
ゆりかごと公的機関の連携の重要性/弟子丸元紀
ゆりかごが私に問いかけたもの/山縣文治
埋もれていた社会的ニーズ/良永彌太郎
第II部 本編 「こうのとりのゆりかご」が問いかけるもの〜こうのとりのゆりかご検証会議・最終報告〜
序章
1.ゆりかごをめぐる検証について
2.検証の方法と内容について
第1章 ゆりかごについて
1.ゆりかごが設置されるまでの経緯
2.ゆりかごの仕組みと対応
3.ゆりかごに関連した内外の制度と取組
第2章 ゆりかごの利用状況とその背景
1.ゆりかごの利用状況と背景
2.ゆりかごの利用状況の総括
第3章 妊娠・出産にかかる相談体制と対応状況
1.慈恵病院での相談対応の状況と背景
2.妊娠・出産にかかる全国の相談窓口の設置状況
第4章 ゆりかごに深く関連する子どもの状況と制度
1.子どもの遺棄・嬰児殺の状況
2.養子縁組の状況
3.妊娠・出産・養育支援にかかる全国の取組
第5章 ゆりかご事例と相談事例から見える諸課題
1.ゆりかごに預け入れる以前に関しての課題
2.ゆりかごの運用面と対応における課題
3.預け入れられた子どもの援助に関する課題
第6章 ゆりかごへの評価
1.現時点でのゆりかごへの評価
2.日本のゆりかごのこれから
第7章 提言と要望—考え得る対応策—
1.慈恵病院・熊本県・熊本市に対する要望
2.国に対する提言と要望
3.全国の行政・関係機関に対する要望
4.マスメディア関係者に対する要望
5.地域社会に対する要望
第8章 検証会議の考え方のまとめ
おわりに
審議の主な経過
検証会議委員名簿
第III部 資料編
1.「こうのとりのゆりかご」の利用状況に係る統計資料
2.妊娠に関する悩み相談3機関比較
3.ゆりかごに類似した各国の制度と取組一覧
4.相談窓口広報カード
5.ゆりかごの外観(平成21年10月20日現在)
6.慈恵病院ホームページ
前書きなど
はじめに (柏女霊峰:「こうのとりのゆりかご」検証会議座長)
平成21年11月26日、2年間にわたって「こうのとりのゆりかご」(以下「ゆりかご」)の検証を続けてきた熊本県の検証会議が、報告書を蒲島郁夫知事に提出した。知事からは、報告書の趣旨に沿って施策を検討するよう厚生労働省に働きかけるとのメッセージがあった。検証会議はゆりかごが設置されてから半年後の11月30日に第1回を開催し、以降、「中間とりまとめ」の公表を含め計10回の議論を経て報告書を提出した。
熊本市の慈恵病院が平成19年5月10日にゆりかごの運用を開始してから2年5か月の間に、51人の預け入れがあった。会議では、51人の事例や慈恵病院相談事例等について詳細に分析し、また、関連する制度等についての調査等も踏まえ、委員全員で真剣な討議を行ってきた。報告書は、本文が序章を含め9章からなる149ページ、資料編が43ページであり、計192ページの大部のものである。そのポイントは、ゆりかごの利用状況とその背景、ゆりかごの評価、課題の総括的提起と制度的提言の3点である。
検証会議報告書は熊本県庁ホームページで公開されているが、検証会議では、委員個人の所感も含めて報告書を後世に残し、また、社会において幅広く議論するための素材として公刊したいと考えた。幸い、検証会議事務局である熊本県や明石書店の理解を得、ここに公刊することができた。
本書の中心はこうのとりのゆりかご最終報告であるが、委員7人による報告書の概要や所感を掲載することとした。また、検証会議を設置した潮谷義子前熊本県知事並びに報告書を受け取っていただいた蒲島郁夫現知事、短期検証を進め、かつ、中期検証の共同運営者でもある熊本市の幸山政史市長の所感を掲載した。なお、慈恵病院にも所感を頂戴できればと考えたが、検証する側とされる側という関係を考慮して自制した。こうのとりのゆりかごが、慈恵病院の「救われる命があるなら救いたい」という高潔なミッションと卓越した実践に支えられていることを思うとき、慈恵病院の実践には、委員一同、心からの敬意を表していることをここに記しておきたい。
(…中略…)
本書の表題は報告書の表題と同様、『「こうのとりのゆりかご」が問いかけるもの』とした。私たちはゆりかごを検証、評価したが、実は、私たちの社会のありようやシステムそのものがゆりかごから問いかけられていたのである。
本書が医療・保健・福祉関係者のみならず国民に広く読まれ、社会的な論議が活発化し、そのことによって、ゆりかごが照射した多くの課題にひかりが当てられていくことを、委員一同、心から願っている。