目次
第1話 ディエゴの物語〜海をこえてきた転校生
◆この本を読むみなさんへ
第2話 ユヘの物語〜私が日本で生まれた理由
第3話 ナミの物語〜おばあちゃんと中国
第4話 リカルドの物語〜沖縄とボリビアのあいだで
第5話 フォンの物語〜ベトナムからの小さな船
第6話 ネブローズの物語〜ふるさとには帰れない
第7話 武来杏の物語〜やっと一緒に暮らせる
第8話 カルロスの物語〜ぼくたちの日本語教室
第9話 ビアンカの物語〜学校に行きたい
第10話 ジョシーの物語〜日本にいさせて
第11話 ソフィーラの物語〜お母さんと話しができない!
第12話 アンドレの物語〜高校進学の壁
第13話 タオの体験〜外人といわないで
第14話 栄子の物語〜震災で起こったこと
第15話 アリの物語〜増えてるの? 外国人犯罪
第16話 スンジャの物語〜ひとさし指の自由
第17話 アレックスの物語〜ぼくたちの進路は?
第18話 美里の物語〜私のほんとうの名前
第19話 リリアンの体験〜私の生き方
第20話 だいき&こうたの物語〜ジュワニと友だちになれてよかった
◆この本のテーマと内容
あとがき
前書きなど
あとがき
本書が生まれたいきさつをおはなしします。
西山優子さん(元明石書店編集部)の思い入れがなければ、本書は生まれることはなかったでしょう。西山さんはある本の編集の過程で出会った外国人の子どもについて、次のように語りながら、本書につながるアイディアを提案されました。
「子どもたちのことばがとても胸に残っています。それは、『こんな思いをしているのは、自分一人じゃないことがわかって、安心した』というものです。そこで、日々、そんな思いを感じながら日本で生活している子どもたちに向けた本がつくれないかと検討しています」。
2007年5月頃のことです。「このようなテーマの本は売れないだろう」と消極的な私に、西山さんが、「こんな本はどうですか」と示してくださったのが、マンガ家みなみさんの前作『世界と地球の困った現実』でした。マンガと解説がセットになったスタイルなら、子どもたちも大人たちも読んでくれる本になるかもしれない。これが本書の企画がスタートした瞬間でした。
本書の作成の作業は困難を極め、作業の過程で何度も書き直しを迫られました。私たちが作業に時間を取られるなか、世界や日本の状況はめまぐるしく変化してきています。このあとがきを書いている段階でも、アメリカ合衆国の金融不況に端を発した世界同時不況は、日本の移住労働者の生活を直撃し、「外国につながる子どもたち」の生活にも深刻な影響を与えています。残念ながら、こうした急激な変化を本書に反映させることはできませんでした。
また、本書の守備範囲はあまりにも広く、当初から1冊ではおさまりきらないことがわかっており、いくつも重要なテーマをあきらめざるをえませんでした。本書完成が間近になってみると編集委員会では「本書であつかえなかったテーマや、時代の変化を盛り込んだ続編を、ぜひともつくりたい」という思いを強く持つようになっています。本書の続編ができる条件は2つ。1冊目のこの本が、皆さんに受け入れられ、たくさん売れること。そして、すてきな絵で主人公にいのちを吹きこんでくれる、マンガ家のみなみさんがもうすこし私たちにつきあってくださること。
本書をつくるにあたって、じつにたくさんの方の協力をいただきました。
まず最初にあげなければならないのは、第13話のタオさん、19話のリリアンさんです。この2つの話は実話を再現したお話です。ふたりの体験をマンガにしたいという私たちの願いを、おふたりは快く承諾してくださいました。その他の話は、複数の子どもたちの体験を合成してひとりの主人公にしたり、性別、年齢、家族構成、国籍などの設定を変えたりしてつくられています。原作をつくった私たちは、1話1話のマンガの主人公を見ると、モデルになった大勢の子どもたちの顔を思い浮かべます。つまり20の物語の背景には、おそらく100人をこえる子どもたちがいるのです。
(…後略…)