コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2025/09/04
この本は、モラルハラスメントの定義やそれが組織に与える影響、さらに予防方法や発生時の対応を、被害者・上司・人事部それぞれの立場から具体的に紹介している。
まず驚いたのは、モラルハラスメントが法律上では明確に定義されていない点である。そのため、対策が抜け落ちやすく、結果として後手に回ることが多かったのだと感じた。予防策としては、コミュニケーション研修を通じて発生リスクを減らすことや、職場に心理的安全性を確保し、発生時に上司や人事部へ相談しやすい環境を整えることの重要性が強調されていた。
また、発生してしまった場合には、被害者はできるだけ早い段階で誰かに相談し、第三者を交えることが重要とされる。管理職や人事部においては、フォーマルな対応を心がけ、最後まで被害者の話を丁寧に聞くこと、そして初動を早くすることが共通して求められていた。著者は、対応が遅れると恨みや不信感が蓄積し、職場環境の悪化につながるリスクがあると述べている。
一方で、読んでいて引っかかった点もあった。本書ではモラハラの目安として1週間に複数回精神的ダメージを与えられた場合、と紹介されていたが、早期対応の重要性を強調する一方で、複数回の発生を前提にしている点は矛盾しているように感じられた。この点について本書で解説がなかったのは残念である。
さらに、多くの書籍では最後に著者自身の考察や提言がまとめられるが、本書ではそれが見られなかった。そのため、さまざまな対策が紹介されてはいるものの、結論や方向性が示されず、読後に「置いてけぼり感」を覚えた。もし可能であれば、日本の現状をより掘り下げたうえで、著者の見解を示してもらえれば、読者としてより納得感を持てたのではないかと思う。
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