サラリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2025/09/19
『子どもへの性加害 ― 性的グルーミングとは何か』(斉藤章佳 著)を読みました。情報番組で「性的グルーミング」という言葉を耳にしたことをきっかけに手に取ったのですが、幅広い角度からこの問題を扱っており、大変学びの多い一冊でした。
本書は以下のような構成となっています。
1. 性的グルーミングの手口(オンライン、面識のある関係、面識のない関係)とその実例
2. 子どもを狙う加害者の思考
3. 性的グルーミング被害の実態
4. 被害者支援の現場(2023年刑法改正「不同意性交等罪」の紹介や、親としての心構え)
5. 加害者側の治療
6. 加害者との対話
被害者と加害者の間で信頼関係が築かれていく過程は、ある意味「洗脳」とも似ていると感じました。また、加害者が子どもを狙う理由のひとつとして「かわいい」と言う言葉が挙げられていました。一見ポジティブに見える表現ですが、その裏に「自分の思い通りになるだろう」という弱者支配の発想が潜んでいることに触れられており、弱い者いじめが嫌いな私としては強い憤りを覚えました。
本書では、子どもをグルーミングから守るために大人や社会が取るべき対策が丁寧に示されています。主に以下の三点に集約されます。
• 予防措置:家庭での包括的性教育、子どもからのSOSを見逃さないこと、命の安全教育を通じた大人の学び直し、加害行為の実態を知ることなど
• 被害発覚時の対応:子どもの言葉を否定しないこと、フォールスメモリーを防ぐために詳細を深追いしすぎないことなど
• 加害者の再発防止と課題:出所後の性犯罪者プログラムの継続的受講、そのフォローアップの必要性など
総じて、本書は加害者・被害者・支援現場・法律・治療といった多角的な視点から性的グルーミングを捉え、対策を提示しており、多くを学ぶことができました。
一方で、あえて指摘するならば、加害者が親であるケースについては明確に扱われていなかったように思います。本書で取り上げられるのは、近所の人や学校関係者、インターネットを介した大人など、「親以外の大人」が中心です。親が加害者となった場合、子どもは親以外の大人に助けを求める必要があり、その際にどう支援体制を整えるかという問題は極めて重要です。本書ではその視点がやや弱く感じられました。これは本書の欠点というよりも、著者の焦点が「社会全体で防ぐべき構造的な加害」に置かれていたためかもしれません。
いずれにせよ、性的グルーミングについて多面的に理解し、大人自身が学び直すきっかけを与えてくれる一冊であり、読後に自分自身も命の安全教育について改めて学び直したいと思わされました。
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