紹介
日本人の知らない「海外の日本図書館」。そこはどういうところで、今、何が必要とされているのか。
海外で日本について学ぶ学生、研究者、そのサポートをする海外の日本図書館について紹介し、その課題やニーズに日本側からどう応え、資料・情報を提供・発信していけばいいのかを考える本です。
本書では、海外の日本図書館やそのライブラリアンについて、資料・蔵書の様子、資料・情報の流通・提供・利用の様子、図書館・ライブラリアンによるサービス・サポートや連携・協力活動の様子、課題・問題点を紹介します。
そのうえで、海外の日本研究者・学生や図書館・ライブラリアンは、どのようなニーズを持っているか、日本側では、そのニーズをどのように把握し、どのように応えればよいか、日本資料・日本情報を、日本から海外へ効率的・効果的に提供・発信するには、どうすればよいかといったことを考えます。
海外の人びとが(資料・情報的に)日本に何を求めているのか、そのユーザのニーズや課題・問題点を、私たちがちゃんと把握して応えていく。日本の資料・情報を効率的・効果的に提供・発信していく。それができるかどうかは、ほかでもない日本の私たちにはねかえってくる問題である――。
「海外の日本研究・日本図書館について多くの方に関心と意識を持っていただくこと。その結果として、さまざまな場面での日本資料・日本情報の効率的・効果的な提供・発信に、ご理解とご協力をいただくこと。本書の最終的な目的はそこにあります。より多くの方に“援軍”となっていただくきっかけとなれば幸いです」……本書・序より
目次
序 日本人の知らない日本図書館
Tanizaki Jun'ichiroの“The Thief”を探す/本書では/「海外の日本図書館」をとりまく世界
第1部 日本語の本は誰が読むか、どこにあるか
1 日本語の本は誰が読むか、どこにあるか―総論
UMass Amherstの日本資料・図書館・ユーザ/世界に学ばれるニッポン/パリ・日本図書館のさまざま/良き“日本理解者”のために/海外からのリクエストはあなたにも届く/“日本リテラシー”がない人も、日本資料を求めている
■インタビュー(1)「日本の図書館員は国際会議の場にもっと出るべき」
2 海外の日本図書館を巡る―事例紹介
1.University of California, Los Angeles (UCLA)
UCLAとその図書館/東アジア図書館と日本資料/古典籍・マイクロフィルム・移民資料―特殊コレクション/e-resource/日本はどう学ばれているか―研究者と学生たち/デジタル化とコラボレーション―日本への注文
2.University of Pittsburgh
University of Pittsburghとその図書館/東アジア図書館とその蔵書/何をどう集めるか―日本資料の収集/棚にどう並べるか―日本資料の配架/日本経済史が凝縮― 三井コレクション/e-resource/日本を教える―情報サービスとインストラクション/グローバル化する日本研究
3.フランスの日本図書館
École Française d'Extrême-Orient (EFEO)/EFEOの図書館と日本資料/目録データベースとSUDOC/Bibliothèque Universitaire des Langues et Civilisations (BULAC)/Bibliothèque Interuniversitaire des Langues Orientales (BIULO)/ひろがるネットワークの輪
4.台湾の日本図書館
台湾の日本研究・日本資料/国立台湾大学図書館/中央研究院・人文社会科学連合図書館/国立中央図書館台湾分館
3 プロフェッショナルたちの流儀―ライブラリアンとコミュニティ
1.North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC)
NCCと北米のライブラリアンたち/resource sharingの仕組み―MVS/ジャパン・イメージ―IUP/研修/年次集会
2.Council on East Asian Libraries (CEAL)
東アジア図書館協議会―CEAL/日本資料委員会―CJM
3.European Association of Japanese Resource Specialists (EAJRS)
EAJRSの歴史と活動/年次集会/図書館は横のつながりなしに成り立たない
4 黄金の国からクール・ジャパンへ―日本研究・資料の歴史
Google Booksに“Japan”はどれだけ登場するか/ジパングに行ってみた―近世/明治ニッポンの世界デビュー―19世紀後半/日本を研究するアメリカ ―20世紀前半/さらに日本を研究するアメリカ―占領期・戦後/バブル経済からマンガ・アニメの国へ―80年代から2000年代
5 Nippon Invisible―日本研究・資料の現状
2008年=1930年説?/日本研究の“退潮傾向”/デジタル化されない日本/日本を学ぶのは誰か―学際化・グローバル化/「引退」ではなく「卒業」?
■インタビュー(2)「韓国の歴史を研究する人も、日本語の資料が必要」
第2部 日本語の本はどのように情報化され、アクセスされるのか
6 収集されるニッポン―収書・選書
どう買うのか―収書/どう選ぶのか―選書/どう支払うのか/日本出版貿易(JPT)/送られるものと欲しいものの間―寄贈/日本美術カタログ収集プロジェクト(JAC)
7 検索可能なニッポン―書誌・目録
書誌・目録がなければ始まらない/CJKをデータ化する/図書情報のライフライン・OCLC/OCLC、CJK対応への道/コピペされるニッポン―日本からの書誌提供/郷に入り郷に従う―日本語書誌の“北米化”/ヨーロッパとNACSIS-CAT/英国CATプロジェクト/欧州和書総合目録/自立した協力体制としての講習
8 お取り寄せされるニッポン―ILL
Interlibrary Loan―ILLとは/敷居が高かったニッポン/仕組み化されるILL―CULCONとGIF/早稲田大学図書館の海外ILL受付/国立国会図書館の遠隔複写サービス/“システム”、“システム外”、そしてe-resourceへ
9 アクセスされるニッポン―e-resource
CD-ROMが動かない/オンラインが契約できない/ユーザが自由に使えない/Digital Resources Committee(DRC)/コンソーシアム/「JapanKnowledge」/世界にひろがる「JapanKnowledge」/e- resource整備は日本の問題
10 クールなニッポン―マンガ・アニメ
世界が愛するマンガ・アニメ/大学・研究図書館でのマンガ・アニメ/オハイオ州立大学のマンガ・コレクション―Billy Ireland Cartoon Library and Museum/どう書きあらわすのか―マンガの書誌・目録/どう選ぶのか―マンガの選書/“クール・ジャパン”のその先にあるもの
■インタビュー(3)「日本の高校には貴重な資料が眠っている」
第3部 日本語の本をどのように世界に発信していくか
11 日本からのサポート―専門機関 ほか
1.国際日本文化研究センター
日本研究のための“センター”/“外書”と図書館/データベースと海外の日本資料
2.国際交流基金
国際交流基金(Japan Foundation)の海外協力活動/海外拠点と図書館/パリ日本文化会館図書館
3.国際文化会館
国際文化会館と図書室/“窓口”と“つながり”の場
4.研修事業
「日本専門家ワークショップ」(日本研究司書研修・日本研究情報専門家研修)/天理古典籍ワークショップ―研修の効果
12 情報発信を考えるヒント
Maureen Donovanさんが実践する情報発信/wikiを活用して情報を編む/社史wiki/メインストリームに流す・つながる/情報発信で何を変えたいのか/考えるヒント集/笠間書院/ブログ「情報の扉の、そのまた向こう」 /リブヨ/NIHONGO eな(いいな)/カーリル・レシピ/宮城資料ネットニュース/WINE(早稲田大学OPAC)/「評価を高めたテロ事件への対応」(『未来をつくる図書館 : ニューヨークからの報告』 菅谷明子)/saveMLAK/(短信)海外日本研究と図書館
●付録 海外の日本研究・日本図書館についてのパスファインダー
あとがき 索引