サラリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2025/09/29 2いいね!
『「すぐに」をやめる』を手に取ったきっかけは、成果や結果ばかりを要求する現代企業の体質に疑問を感じていたからだ。本書は二部構成で、第一部では「ネガティブ・ケイパビリティ(不確実さや答えの出ない状況を受け入れる力)」の欠乏が引き起こしている事例を紹介し、第二部ではそれを組織に落とし込むための具体的アプローチを20項目提示している。
読んでいていくつか刺さる点はあったが、事例として挙げられていた会社については「そんな会社ならさっさと辞めて転職した方が早いのでは」と思ってしまった。また、仮に本書の指摘通り「ネガティブ・ケイパビリティの不足」が原因だとするなら、20項目をすべて導入するには膨大な時間がかかりそうで、現実的には転職のほうが早いと感じたのも事実である。とはいえ、第二部のアプローチにも学びはあり、特に「成果と変化のマトリクス」の考え方は興味深かった。
一方で気になったのは、経営陣や社長、社員の視点は本書で扱われていたものの、「株主の視点」が十分に論じられていなかった点だ。個人投資家でも企業に資金を投じられる現代において、株価や投資判断にネガティブ・ケイパビリティがどのように関わるのか、そして株主にどう説明すれば受け入れられるのか、といった点についてはもう少し議論が欲しかった。最終的なゴールを株主に置きつつ、その前段階として経営陣・社長・社員の合意形成を通じてネガティブ・ケイパビリティを浸透させていく、というのも一つの道ではないかと思う。
また、第一部の事例と第二部の20項目がどのように対応しているのかがやや分かりにくかった。第二部で各アプローチと対応する事例にもう一度言及してもらえれば、理解が深まったと思う。さらに驚いたのは、想像か実例かは不明だが「社員教育にまったく予算を出さない会社」が存在するという点だった。
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