藤雪花さんの書評 2022/07/21
いち早くロシア経済制裁に踏み切った日本。情報はすべてロシアが悪くてウクライナ人は被害者だったし、ウクライナの大統領の要請にこたえて即座に懲らしめることは当然だと思えた。メディアはロシアは世界を敵にしているというけれど、メディアのいう世界は実は一部。子供が何か欲しいときに、みんな持っているからというのと同じでは。非難はしたが制裁もしない国、非難も制裁もしない国、ロシアを支持した国もある。歴史的にヨーロッパに搾取されたアフリカやインドなどは非難も制裁も加わっていない。作者のエマニュエル・トッドは、家族構成や乳児死亡率などから世界を分析する。ロシアは女性の地位が最も高い国で、乳児死亡率はアメリカよりも低い。平均年齢はアメリカは45歳から54歳の白人の自殺率の上昇や麻薬物質の過剰摂取、アルコール依存症により低下しているのに、ロシアはどんどん平均寿命を延ばしている。果たして病んでいる社会は、欧米なのかロシアなのか。日本が行った経済制裁のカウンターパンチで、ロシアからガス資源の輸入が危うくなりこの冬のガス不足が予測される中、日本はこの戦争に、自ら進んで入っていく必要があったのかどうか、今一度考えたい。現在進行形で続く悲惨なウクライナの大地を戦場にした戦争はいったいどういうものなのか、きちんととらえ直すために、日本人全員に読んでほしいとさえ思う本。
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