コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2025/09/05
本書は、不平等という社会課題に対し、アファーマティブアクションという手法がどのように位置づけられ、活用されてきたかを歴史的に検討している。冒頭では、アメリカにおけるアファーマティブアクションの成立から2023年のSFFA判決に至るまでの経緯が詳しく解説されており、制度が果たしてきた役割と変遷を理解できる内容となっている。最終章では、日本の現状についてもアメリカと対比しながら論じられており、日本における制度的遅れが指摘されていた。
読後の考察として、アファーマティブアクションは時代背景や社会状況に応じてその定義や意味づけが変化していくものであると感じた。そのため適切に運用するには、まず不平等を禁止する法律の整備と、客観的に格差を可視化できる統計データの構築が不可欠である。その上で政府が制度設計を行い、市民に十分な説明責任を果たしつつ実施する必要がある。また導入後には、社会に与えた影響を政府主導で検証し、うまく機能しなかった点は改善していくというプロセスが重要である。ただ日本においては、不平等を是正するための統計的基盤と法制度を先行的に整備した上で、初めてアファーマティブアクションの是非を検討できる段階に立てる状況なので今後に期待する。
最後になるが本書を通じて、アファーマティブアクションに限らず、社会制度全般において「唯一の正解」は存在せず、データに基づく検証と透明性の高い説明責任、さらに改善の継続が不可欠であることを学ぶことができた。
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