ムラサキ・ツムグさんのコメント 2025/07/28
2025年第22回本屋大賞をきっかけに興味を持ち、近くの図書館で予約してから2ヶ月。本日、ようやく読むことができた。ひとりで泣いたり笑ったりしながら、1時間半ほどかけて一気に読了。映画館で映画を観るような読書体験だった。
主人公である薫子のことを、最初はとても面倒臭くて嫌な女だと思った。しかし、彼女の抱える苦しみや心の痛みが明らかになるにつれ、その人となりに少しずつ理解が及ぶようになっていった。それと同時に、亡弟の元恋人であるせつなとの一風変わった交流を通じて、薫子が本来の自分を取り戻していくのがわかり、それが我がことのように喜ばしく感じられた。このあたりの「語り」の巧みさが、本作が本屋大賞を受賞した理由のひとつではないだろうか。
これ以上はネタバレになるので語らずにおく。
とにかく、読み終えたあとに心があたたかくなる作品だった。とても良かった。