前書きなど
大正大学人間学部社会福祉学科は、大正大学の前身にあたる宗教大学社会事業研究室の開室から数えて、2013(平成25)年に95周年を迎える。日本で随一の歴史をもつ社会福祉学科である。この『ソーシャルワーク実習テキスト』は社会福祉学科設立95周年を記念しての出版である。
大正大学社会福祉学科は、これまで首尾一貫して現場で即戦力になるソーシャルワーカーの養成を目指してきた。ただ単に教養として、社会福祉を学ぶのではなく、社会福祉の現場で社会福祉援助者として働こうという、「現場指向型」の実践者の養成を目指してきた。こういった実践力を身につけるために重視してきたのが、実習教育である。
2008(平成19)年の「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正に伴う、社会福祉士養成カリキュラムの大幅な見直しにおいても、実習演習科目の改善が大きな焦点となった。「相談援助実習」に限っていえば主に次のような改正がなされた。
・実習を担当する教員の員数が学生20人につき1人以上に規定された
・実習を担当する教員の要件が改善された
・実習中に実習担当教員による巡回指導を少なくとも週1回以上おこなうことが規定された
・相談援助実習の実習総時間数は180時間とこれまで通り変わらないが、相談援助実習の一連の過程を網羅的かつ集中的に学習できるよう、一つの実習施設において120時間以上の実習をおこなうことが規定された
・実習施設・機関の実習指導者について、社会福祉士の資格取得後3年以上相談援助業務に従事した経験を有する者であって、社会福祉士実習指導者講習会の課程を修了した者であることとの規定が加わった
大正大学では、国の社会福祉士養成カリキュラムがこのように改正される前から、その主だった部分については既にスタンダードになっていたのである。例えば、1クラス20人以下の構成や、実習担当教員については現場の経験があり、社会福祉士・精神保健福祉士の有資格者が中心となって指導にあたっており、施設実習指導者についても、主だった実習施設・機関に大正大学が独自に委嘱した「実習指導講師」を配する等して、実習先と大学双方の連携協力による実習教育に努めてきた経過がある。
一方で、大正大学の実習形態はこれまで、「フィールドワーク」と呼んできた大正大学独自の1週間実習を2年次に履修したうえに、3年次4年次と90時間ずつの資格実習を積み重ねて履修する「先修制」を採用してきた。学生は3回の実習体験に加え、その間に実習担当教員がきめ細かく指導することで、学生自身の現場指向性を醸成し高めるとともに、自らの志を次第に明確化し、社会福祉現場で働くソーシャルワーカーの養成に努めてきたのである。
このような大正大学独自の実習形態のよさを活かすべく、新カリキュラムでは、2年次に1週間の入門実習を履修した後、3年次には3週間の本実習をおこなうことで180時間の実習を完成させる形にした。180時間を一つの実習先で実習するのと比べると倍以上の手間がかかるが、このような手数をかけながら、現場指向型のソーシャルワーカーの養成に努めてきたのが大正大学なのである。
このような実習を重視して長年取り組んできた大正大学の、ソーシャルワーク実習教育の集大成として企画されたのが本書である。読者にとってこのテキストが、実践力のある有能なソーシャルワーカーになるための一助になることを願ってやまない。
2013年4月1日
大正大学人間学部社会福祉学科