目次
序─今、書き留めておかないと[元行橋市教育委員会教育長 徳永文晤]
第1章 郷土を歩く
第2章 生活に探す
第3章 言葉に遊ぶ
第4章 人物に学ぶ
あとがき[光畑浩治]
『田舎日記、これにて』に寄せて:追悼文集
[小野剛史 加来睦博 城戸淳一 木村あゆみ 小正路淑泰
佐伯浩之 棚田規生 永尾正剛 野元 桂 藤井悦子 別府大悟
前田 賤 松本昌樹 桃井正彦 光畑希花]
前書きなど
最近、我が家そばの農道散策を小一時間するようになった。稲刈りを終えた農道を歩くと、土の匂い、藁の匂いがプンとたつ。稲の切り株が、等しく並び、いろんな模様を想像させる。
道は土のままだから足に優しい。それに田んぼ側の畔の雑草は刈り取られており、その上の歩きは、さらに柔らかく、草が足を包み込むよう。一方、反対側の小山そばの道端の草は刈られずに残ったまま。野花の楽園だ。あちこちの小花には、蜂や蝶がうつり飛ぶ。その光景が、また心和ませる。陽がそそぐ道の歩みの中、遠くの家の眺めは、何故かひっそり感の風情で、どの家も穏やかに見える。静かな景色に溶け込んでいるからだろうか。
ゆっくり歩いて見ると、さりげない雑草や小川の世界が意外にも密かな楽しみを与えてくれる。大袈裟に言えば、自分ひとりの小宇宙を体験できると言っていい。田舎暮らしはこれがいい。
(65話「我が家そばの農道散策で思う」より抜粋)
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このたび、「田舎日記」シリーズの七冊目を上梓することになった。二〇〇七年(平成一九)三月、行橋市役所を定年退職。これまで精一杯勤めてきたのだから、老後は年金暮らしでいい、自由気ままに過ごす日々を、という気持ちだった。退職一年後、あるミニコミ誌に「何か書いては」の誘いに「田舎者の駄文でよければ」とタイトルを「田舎日記」として「筆すさび千字文」をスタートさせた。
一文の視点は、郷土の名所、旧跡はすでに郷土史家によって紹介されているので、隠れ、忘れられ、知られていない貴重な遺産が、まだまだ眠っているだろうの思いで、各地を巡ることにした。それぞれを訪ね、人々の記憶を問い、尋ね、記録に残す作業を重ねた。すると、忘れてはならないヒト、隠れた大切なモノ、守っていきたいコトなど、あるわ、あるわで、追っかけになった。視点をちょっと変えるだけで、思いがけないヒト、モノ、コトが眼前に現れてくる日々が続いている。(略)
振り返れば、二〇〇八年からの文も一五〇〇篇を超えた。その内一三六八篇を世に出すことができた。「日記」だから、暮らしの中で、聞いて、見て、知って、思って、感じたことを素直に書き記してきた。そして、いかにヒト、モノ、コトの見過ごしが多かったかが分かった。今後も「田舎」をいかに書き、記し、残すか、を日々問いながら、筆すさび千字文は「田舎」暮らしが尽きるまで続けたい。(「あとがき」より)