紹介
「音楽」は、一つの楽曲を意味する言葉にとどまらないだろう。
「音楽」には、作品そのものに本来備わる特質・構造・意味/メッセージだけでなく、それがあらゆるアクター(表現者・オーディエンス・空間や環境・音楽プレイヤーや音響機材・人間の身体/心情や音をめぐるコンテクストなど)をつなぎ合わせ、一つの塊のように統合させようとする力があるからだ。
本書では、このようにさまざまなものを編み込んでいく音楽の力(=サウンド・アッサンブラージュ)を包括的に表現し、「音楽」の持つ意味を大きく拡張していく。
世界各所で音楽や芸能に向き合ってきた人類学者、音楽教育の実践者や作曲家らが、「音が生み出される場」の豊かな描出を通じて、「音楽の力とは何か」という問いに言葉を与えようと模索する、新たな音楽の民族誌。
目次
〈序章〉「音楽の力」を取り戻すための試論
小西公大
第1部 つながる(媒介)
〈第一章〉音が編み込む力
—インド・タール沙漠の芸能世界が教えてくれたこと
小西公大
〈第二章〉「見せる場」から「音楽とともにいる場」へ
—ウガンダの学校と盛り場で
大門碧
〈第三章〉音を継ぎ合わせる「視線」
—インドの歌舞踊ラーワニーの舞台実践から
飯田玲子
第2部 うみだす(創造)
〈第四章〉醸される島の音の力
—三宅の声と太鼓が生み出すアッサンブラージュ
小林史子
〈第五章〉つながりを手繰り寄せる/選り分ける
—社会的存在としてのチベタン・ポップ
山本達也
〈第六章〉調を外れて響き合うトーンチャイム
—サウンド・アッサンブラージュの授業風景
石上則子
第3部 つたえる(継承)
〈第七章〉制度と情動をめぐる相剋
—東北タイのモーラム芸能にみる暴力・性・死
平田晶子
〈第八章〉一切をつむぎ、交感するアッサンブラージュの力
—高知におけるガムランプロジェクトの実践を通して
宮内康乃
〈第九章〉媒介、愛着、継承
—ソロモン諸島アレアレにおける在来楽器アウをめぐって
佐本英規
〈補論〉 仮想空間で音楽になること
小西公大
おわりに