紹介
【発売たちまち重版!】
生きる力、リーダーシップ力、コミュ力…
◯◯力が、私たちを苦しめる。
組織の専門家が命をかけて探究した、他者と生きる知恵。
前職では「使えない」私が、現職では「優秀」に。
それって、本当に私の「能力」なの?
移ろいがちな他人の評価が、生きづらさを生み出す能力社会。
ガン闘病中の著者が、そのカラクリを教育社会学と組織開発の視点でときほぐし、
他者とより良く生きるあり方を模索する。
—朝日新聞「タイパ社会」特集ほかメディアで話題!—————
「能力論の新しい地平をひらいた、学術的にみても優れた本だと思います」
大学時代の師 苅谷剛彦さん(オックスフォード大学教授)
「『能力』にすがってしまうのは、
不確定な人生を少しでも確かだと思いたい、
私たち人間の弱さゆえなのでしょう」
執筆伴走 磯野真穂さん(人類学者)
「俺にケンカ売ってんの? 君いい度胸してるな」
ケンカするほど仲のいい先輩 山口周さん(独立研究者・著作家)
「自己否定しないで前に進んでいくことを大切にしてほしい」
女優・作家・歌手 中江有里さん(NHKラジオ第1「マイあさ!」より)
「人間の能力と適性は多様であり、それを数値化して比較すること自体が、一つの物語に過ぎない」
作家 佐藤優さん(毎日新聞2023年3月11日付読書面より)
「本書のメッセージが伝わったその先には、きっと今とは少し違う、もっと生きやすい社会が広がっていくはずだ」
代官山 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 宮台由美子さん(集英社「yoi」より)
「『能力』は正当性をまとう。能力が足りないのは自己責任、必要な能力を獲得すべく精進しなくては……と追い立てられる日々に待ったをかけるのが本書だ」
日本経済新聞書評(2023年2月18日付朝刊読書面より)
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職場や学校、家庭で抱えるモヤモヤを
なかったことにしたくないすべての人へ
「行きすぎた能力社会じゃ、幼い子どもを残して死にきれない!」
ガン闘病中の著者が贈る、まさかのストーリー。
——ときは、2037年。急降下した
上司の評価で病める息子を救うため、
死んだはずの母さんがやってきた!?
「人事部が客観性の根拠として、人材開発業界を頼っているわけだね。
ふむ、とすると、『能力』なんて幻とかなんとかうそぶきながら、それを飯のタネにしてきたのは、やはり母さん、あなたのいた業界じゃないか。」(本文より)
執筆に伴走した、磯野真穂さん(人類学者)も言葉を寄せる。
目次
はじめに
プロローグ 母さん、僕は仕事のできない、能力のないやつですか?
第1話 能力の乱高下
第2話 能力の化けの皮剝がし—教育社会学ことはじめ
第3話 不穏な「求める能力」—尖るのを止めた大学
第4話 能力の泥沼—誰も知らない本当の私
第5話 求ム、能力屋さん—人材開発業界の価値
第6話 爆売れ・リーダーシップ—「能力」が売れるカラクリ①
第7話 止まらぬ進化と深化—「能力」が売れるカラクリ②
第8話 問題はあなたのメンタル—能力開発の行き着く先
第9話 葛藤をなくさない—母から子へ
エピローグ 母さん、ふつうでない私は幸せになれますか?
伴走者からの言葉 磯野真穂
おわりに
前書きなど
はじめに
「どうしてうまくいかないんだろう......。これって、自分のせい?」
職場や学校などで物事がうまくいかないとき、原因を自分のダメさ加減に求めてしまう、まじめな私たち。言動はもちろん、考え方、習慣、果ては性格までが反省対象となる。でも、その一方で、「本当に自分だけが問題なの?」とモヤモヤすることはないですか?
“目的に向かって活動する二人以上の人間の集まり”を「組織(チーム)」と捉える私は、組織開発の専門家です。企業はもちろん、病院、学校、スポーツチーム、時には親子や夫婦に寄り添いながら、人と人の関係性をより良くする方法を考え、実践しています。そのなかで、社会の「こうあるべき」という一見正しい要請が、個人を追い詰め、人と人との協働を阻む大きな要因となっていることに懸念を抱いてきました。
とりわけ、厄介なのが、本書が主に扱う「能力」と呼ばれるものです。ある特定の「能力」を持つことが正しく、それを獲得することが人を幸せや成功に導く— そんなふうに語られることの多いこと。冒頭に記したような不安や違和感を抱える人にすかさず、「そう、 あなたがダメなのは、『能力』が低いから。『〇〇力』があればうまくいく」と耳打ちするのです。そうして多くの人が、問題は「自分の能力」と信じて、日々悪戦苦闘を続けていく。しかし、華々しく活躍できるのは一握りで、移ろいがちな誰かの評価や、次々と登場しては消える「社会が求める能力」の要請に疲弊し、心の病を抱えてしまう人も珍しくありません。しかも、それらはすべて「自己責任」として片付けられるのです。
しかし、人と人がともに生きる場で生じる不安や違和感の多くは、他者との「関係性」の問題。うまくいかないのは、あなただけの問題でも、個人の「能力」の問題でもありません。
現場で経験を深めるなかで、「あなたには足りないものがある」と個人に欠乏を突きつけ、 不安を煽るような言説が年々影響力を増していくことに、大きな危惧を覚えるようになりました。本書では、こうした「能力」を巡る生きづらさの構造をじっくりと解きほぐし、 その泥沼から抜け出す方法を模索しています。
私は今、幼い子どもたちを育てながら、ガン闘病を続けています。そんななかで思うのが、こんな息苦しい社会に子どもたちが生きていくとしたら、死んでも死にきれないとい うことです。そうした問題意識から書きはじめたこの本は、自然と子どもたちとの対話形式になりました。 年後、大人になった子どもたちに向けた、「母さん」の教えなので、少々うざったく感じるかもしれません。しかし、どんな場所でも、新しい環境で人との関係に 悩むとき、他者とともにより良く生きるためのエッセンスを詰め込んだつもりです。
それでは、母が子に贈る、ちょっと不思議な能力の話。はじまり、はじまり〜。