目次
日本の読者のみなさんへ
編者のことば 間近で見てきた台湾の生理革命
はじめに 台湾の生理文化を振り返る
Chapter 1.「生理」と私たちの歴史
そもそも月経って? ─女性がいない医学
少女の視点が欠けている月経教育
なぜ憂鬱なのか─隠された身体感覚
布ナプキンブランド「CherryP」の物語
タンポン暗黒時代
タンポン推進大使
Chapter 2.台湾製タンポンブランドの誕生
ヴァネッサの船出
「医療機器」のハードル
理想か、現実か─ヴァネッサの決断
Chapter 3.台湾の女性たちに月経カップを
月経カップがほしい!
クラウドファンディングがスタート
生理に一輪の花を
小さなカップとシスターフッド
Chapter 4.生理を短くするムーンパンツ
掲示板のガールズトーク
「GoMoond」を立ち上げる
消費者のための月経教育
隠れ生理期間
青い液体とイライラの正体
生理マニアの祭典
オフラインのイベント「月月会」
私たちの生理革命
おわりに 生理を豊かな経験に変えることは、もはや夢ではない
推薦のことば 女性にやさしい世界をつくろう─成令方
推薦のことば 切っても切れない生理用品と女性の歴史─楊佳羚
訳者あとがき―小島あつ子
解説 日本で、生理を仕事にする。―北原みのり
年表
前書きなど
日本の読者のみなさんへ
ほんの十数年前まで、台湾は女性蔑視の言葉が溢れる国でした。テレビのバラエティ番組で、ある男性司会者が「(女性がタンポンを使うのは)血を吸って膨らむと気持よくなるからだ」と笑いながら発言していたほどで、そんな光景は日常にありふれていました。保守的な環境で成長した私たちは、自然と挿入型の生理用品に対して否定的な固定観念を持ち、経血は不潔なものとさえ考えていたのです。
しかし大人になり、海外のタンポンをオンラインで購入し使うようになると、生理に対するイメージは激変しました。生理中でも泳げるし、スポーツもできる。ムレや不快感、かぶれなどを我慢する必要もなくなりました。快適に過ごすために生理用品を選んで使うことは、女性の権利であると気付かされたのです。
私たちは独自に女性たちのニーズを調べました。すでに欧米で普及していた月経カップや月経ディスク、吸水ショーツなどの生理用品の分析・研究からスタートし、少しずつ業界に参入していきました。本書でも紹介している CherryP のオーガニックコットン製布ナプキンや私たちが研究開発したムーンパンツ、そして月経カップを開発した凱娜KiraKiraが昨年発売を開始したばかりの月経ディスクと、さまざまな商品が市場に送り出されました。収益の点では、使い捨てナプキンが市場シェア率九五%と圧倒的です。しかし私たちの目的は単なる市場の開拓ではなく、ユーザーのニーズを考慮し、女性が選択する権利を追究していくことなのです。
快適さを求めることは人間本来の権利であり、社会が発展していくための原動力でもあります。私たちが目指すのは、女性が自由に生理用品を選べる社会です。そして使い捨てナプキンや布ナプキン、タンポン、月経カップ、吸水ショーツなどさまざまな組み合わせを身体の状態や好みに合わせて選ぶことができれば、生理期間をもっと自由に過ごせるようになります。それもまた女性の権利のひとつだと考えています。
台湾には布ナプキンのメーカーが数えきれないほどありますが、タンポンや吸水ショーツ、月経カップのメーカーも今では複数できています。またオンライン上のフォーラムやソーシャルグループ、個人のフェイスブックでもさまざまなブランドの製品を使ってみた経験談がシェアされるようになりました。十数年前と比べて、社会の空気は変わってきています。
女性が十分な教育を受け、経済的に自立し、産み育てる権利を獲得することは、一朝一夕に実現しえない大きな課題です。政府や社会運動団体がそのために活動していますが、私たちはそこに足りないものを補おうとしています。
それは何か?ずばり、生活必需品です。忘れられがちな生活必需品もまた技術の結晶であり、社会の発展とともに進化すべきものなのです。
本書に記されているのは台湾における生理用品の発展史だけではありません。個人的なニーズから出発した女性起業家たちが、社会全体で女性の権利意識を覚醒させるために動いてきた記録でもあります。
台湾と近しい日本で本書が出版されることをとてもうれしく思います。台湾の女性たちにインスピレーションを与えたこの本が日本のみなさんにも届くことで、私たちがともに女性の権利拡大のため貢献していけることを願っています。
GoMoond