目次
【巻頭詩】
春 日[金子秀俊]
【詩】
冬の隧道[柴田康弘]
蜘蛛と生きる[麻田春太]
今年の秋の その向こう[松野弘子]
まだまだ大変だ[秋山喜文]
ヘルペス体験[高森 保]
花 桃[本田雅子]
【俳句】
春燦々と[麻田春庵]
奴 凧[中園 倫]
【短歌】
湖東三山[中村重義]
【随想】
鬼 灯[園田明男]
山開きの日[木村 咲]
初めて[井野光憲]
■科学エッセイ お化けのエネルギー[屋代彰子]
【掌編】
雨後晴[今給黎靖子]
【小説】
雪華の声[野見山悠紀彦]
南阿蘇戦記[塚元秀樹]
ロスコの部[屋上村信広]
もう一つの世界[二][緑川すゞ子]
カジュエロ町のサントス 南十字星の下 熱砂の祈り[Ⅳ][永井竜造]
船島(巌流島)の決闘・異聞[宮川行志]
戦国スケッチ❶ 放ち討ち[箱嶌八郎]
【コラム】オートバイ/運気とおみくじ/ユーチューブ・ミュージック
■編集委員会便り
編集後記
579号への時評・季評抜粋/受贈誌
同人募集/原稿募集/同人・特別同人名簿
前書きなど
【巻頭詩】
春 日[金子秀俊]
天皇誕生日の午後のことである
私は我家へ向かう坂道を下っていた
二人の男の子が手をつないで坂を上って来る
一人は小学校の高学年と思われる
一人はまだ学校にあがらないぐらいの小さな子
小さい方の子が上を向いて大きい方の子に
けんめいに何か話している
大きい方の子はやや腰をかがめて聞いている
私とすれ違おうとする時
大きい方の子が
「こんにちは」と
突然あいさつをした
私は驚いて
「こんにちは」と応える
「兄弟ですか」
私がたずねると
「はい」
兄が答えた
二人はゆっくりと坂をのぼっていく
私は二人を見て思った
二人の両親はどんな人だろう
あたたかい光があふれる思いがした