目次
【巻頭詩】
今 本当にいい時[秋山喜文]
【詩】
水 面[柴田康弘]
春を待つ[麻田春太]
すがるのは[林 恭子]
蘇花公路[金子秀俊]
いわなければよかった[松野弘子]
【随想】
奥八女の里“ちゃらんけ”小噺の件[椎窓たけし]
ひらめきセンサー[岸川瑞恵]
林 檎[屋代彰子]
金靴屋さん[木村 咲]
健康寿命と地域づくり[高森 保]
【俳句】
伊良戸山遠望[椎窓たけし]
酒機嫌[中園 倫]
春 愁[麻田春庵]
【短歌】
寸感抄[中村重義]
【掌編】
不穏な夢[野見山悠紀彦]
人 形[今給黎靖子]
メンタルヘルス担当者のメンタルヘルス[木島丈雄]
【小説】
いしのうへ[前編][木澤 千]
新受胎[城戸祐介]
カジュエロ町のサントス[Ⅰ][永井竜造]
落魄の山河[小泊有希]
赤チンの歌[宮川行志]
かくれがま[園田明男]
【コラム】なぜ釣りをするのか/袖返す戀でした/一千八十七名
[訃報]椎窓猛さん…九州文学編集委員一同
■運営・編集委員会便り
《参加報告》第4回全国同人雑誌会議・第1回全国同人雑誌協議会
既刊号への時評・季評抜粋
令和3年度九州文学年度賞決定/編集後記 他
前書きなど
【巻頭詩】
今 本当にいい時 [秋山喜文]
高校・大学と同期生だったM君は今
完全な認知症になり
たずねて行っても私のことを認識できず
知らん顔をしている
悲しいことだ
あんなに親しかったのに
すでに私も認知症が始まっているそうだが
自分でもわかる
用心はしているのだが
用心が不十分のようで
世の中一見平和
がんばろうと思うが
北朝鮮・中国・中東地域などなど
一触即発 どうなるかわからない
静かな明け暮れの今を大事にして
自分にできることをしなければならない
本当にわかっているのか君!(私?)
* *
[訃報]椎窓猛さん(抜粋)
『九州文学』同人の大先輩である椎窓猛さんが去る一月二十七日、お亡くなりになりました。九十二歳でした。
椎窓さんは福岡県矢部村のご出身で、小学校教諭を経て、旧矢部村教育長を十六年間務められました。詩人や童話作家として活動され、数多くの文学的功績を残されました。
『九州文学』との関わりは古く、椎窓さんは第六期から入会。一時退会されていましたが、第七期に再入会されました。その際、「九州文學」の題字を揮毫していただき、この題字は第八期の我々も掲げさせていただいております。
第七期において、随筆の連作、「気まぐれ文学館」、続いて、「天窓舎“走馬灯”季録」をほぼ毎号にわたり執筆されました。その中で、椎窓さんは自らを、「平作家」、「平詩人」、「老文学青年」という呼称が当を得ているとおっしゃっています。「平作家」というのは、蔑称ではなく、「印税収入によって休息する余裕を持たず」、「いかに書いても、あらゆる意味で『特権』というものを持ち得なかった平作家」(広津和郎の「徳田秋声論」)という意味での「平作家」なのですが、椎窓さんは、ある意味「平作家」を貫いたと言えるのではないでしょうか。
そんな椎窓さんだからこそ、我々を見る目線はとても優しかったと思うのです。椎窓さんの随筆には『九州文学』への言及も多く、ことのほか愛着をもっておられたことがよくわかります。『九州文学』に対する親身の情愛は、第七期を引き継いだ私たちにも注がれ、第八期575号の巻頭詩を依頼した時には、「第八期『九州文学』出版祝唄」と題した詩をすぐに寄せていただき、我々を励ましていただきました。
我々『九州文学』同人の精神的拠りどころであった椎窓さんのご逝去を悼み、慎んでご冥福をお祈り申し上げます。 [九州文学編集委員一同]