紹介
国家資格としてスタートした公認心理師制度。これが実社会のなかで効力を発揮するためには、養成カリキュラムで/を経たのちに、あるいは資格取得プロセスで/取得後に、いかにして「実社会でのニーズ」に即した“知”と“経験”を積み上げてゆくか? に懸かっています。そうした「実践知」蓄積の第一歩として、本シリーズは編さんされました。
実社会における“五つの分野”「保健医療」「福祉」「教育」「司法・犯罪」「産業・労働」で活動する公認心理師〔創元社刊『公認心理師 分野別テキスト』全五巻などを参照〕には、“四つの役割”を果たすことが求められ、それが、ここに公刊される四巻【心理的アセスメント】【心理支援】【家族関係・集団・地域社会】【心の健康教育】に相当します。
複数の職種が連携し「実社会でのニーズ」に応えていく勘どころは? 資格取得後に実地で吸収してゆくスキルは? ――この四巻は、資格制度に組み込まれた“養成カリキュラム”に準じながら、これから公認心理師を目指す人/すでに活動している人に肝要な、“現場”に即して“一人ひとり”に寄り添うために欠かせない「羅針盤」を提供します。
目次
理論篇
第1章 心理的アセスメントの考え方
・心理的アセスメントのコア・コンピテンシー
・プロセス
・生物心理社会モデル
第2章 相談・助言・指導などへの応用
・協働的/治療的なアセスメント
・情報の統合とケースフォーミュレーション
・「関与しながらの観察」と心理的アセスメント
実践篇
第1章 保健医療分野における心理的アセスメント
第2章 福祉分野におけるアセスメントと支援をつなぐ実践
第3章 教育分野におけるアセスメントの特徴と 実践
第4章 司法・犯罪分野におけるアセスメントの実際
第5章 産業・労働分野におけるアセスメントの意義と実際
前書きなど
監修者「まえがき」より
2018年4月に公認心理師法に基づく公認心理師の養成がスタートした。……2018年は公認心理師の“現実化”元年と言ってもよかろう。ここに言う“現実化”とは、公的存在としての心理専門職の創出とその基盤となる法、公認心理師法の“実現”に続く段階として、その実体を確実に創出する道筋のことである。すなわち、「養成の充実」と「有為な公認心理師の輩出」、「職能団体の成熟」と「公認心理師の終わることのない技能の維持向上」を担保する道筋のことである。
……
この《公認心理師 実践ガイダンス》(全四巻)では、公認心理師カリキュラム等検討会『報告書』に準拠し、細かく丁寧に業務の方向性と内容を検討し、“四つの業務”について学べるようになっている。……読者には、これら編者ならびに執筆者とともに、あすの公認心理師の現実化へと歩を進められることを心から願っている。
編者「あとがき」より
この四巻《公認心理師 実践ガイダンス》は「大学院後半のカリキュラム」を意識したものになっています。本書が大学院生にとって、①大学院での学びが現場での実践にどうつながるのかを理解できること、②さまざまな分野における心理的アセスメントのプロセスを具体的にイメージできること、③必ずしも一つの正解があるわけではない臨床実践のなかで「自分だったらどのようにするか」を考える練習ができることの助けになることを願っています。また大学院を修了し、現場に出始めたときや、ある分野から別の分野に転職するときなどにも、ぜひ活用していただきたければと思います。
……心理的アセスメントの実践には変わらないものもある……それは一人ひとりの違いを丁寧に理解し、思いやりをもって支援につなげる姿勢ではないでしょうか。
症状や行動など、人は表面に現れたものに目を奪われがちです。しかしながら同じような問題であっても、その背景にある心理は異なります。例えば……それぞれの理由に耳を傾け、個別的な事情を明らかにしていく。心理検査などの方法を用いることで、よりその人らしさを浮かび上がらせる。悪いことをする背景には、悲しみや寂しさの感情がある……。いわゆる「評価」ではなく、他者との比較でもなく、心理的アセスメントは対象としての個の「理解」を追求します。個人差への関心から始まった心理的アセスメントの、これからも変わらないところだと思います。