前書きなど
DOWN ON THE STREET
これまで30年に渡り、世界の幾多の都市を彷徨し、街と人々が織りなす光景を撮り歩いて来た。しかし、自分は事件や社会問題のドキュメンタリーを追求するカメラマンという訳ではない。直感に身を任せて街に飛び込み、あくまでもパーソナルな視点でスナップして来たに過ぎない。
スナップ写真には、時として意味や説明を越えた得体の知れない力を感じる事がある。リアルな現実を映し出しながらも、現実そのままではない「鏡の向こう側」の領域に踏み込んだ様な奇妙な感覚なのだ。偶然が大きく作用するスナップを積み重ねる事によって、知識や概念としての都市の姿とは異なる「何か」が写るのだと思っている。
自分に出来る事は、今までも、またこれからも街路に身を置き、ひたすら歩き、出くわした人々や予期せぬ光景に対して、身体の反応するままのスナップを実践する事だけだ。
フィルム時代の作品をまとめた前作『STREET RAMBLER』刊行後、撮影をデジタル化して10年余りが経過した。今回、撮り貯めたデジタル・ストリートスナップの場所と時間をバラバラに解体し、意味を剥ぎ取り、写真集として再構成しようと思い立った。
写真集の中で、都市に流れる歳月の光が響き合い、もうひとつの世界がリアルに立ち上がって来るならば嬉しい限りである。
中藤毅彦