紹介
いま、公立学校がになっていたはずの、地域住民の生きるためのニーズを保障する「ケア」を備えた公共(コモン)としての役割が、危機に瀕している。
そんな時代でも、希望の灯を照らし続けている高校がある。それが、大阪府立松原高等学校である。
1974年に、地域の学びの〈公共財〉として、「一切の差別を許さない」「一切の落ちこぼれを許さない」「地域に根ざした学校」を三原則として生まれた松原高校は、1996年に総合学科へ改編する。
50年にわたって、常に教員同士がヴィジョンやコンセプトを言語化して共有し、生徒自身や地域住民と向き合う中で、ユニークな実践を紡ぎ、生徒を信じる場を作り続けてきた。
本書は、FAITH(信頼)を核心に、人と人が想いを交わし、支え合って、人間らしく生きることを大切にしてきた松原高校の取り組みを、教員や市民、卒業生の言葉でいきいきと伝える。
学校に優しさや支え合いを求めたいと思う人、一人ひとりが大切にされる社会を作りたいと思う人、これから先生になりたい人や先生としていろんな問いを持っている人、そして、教育につながるすべての大人のみなさんに贈る「本による学校公開」。
■目次■
●1時間目 ホームルーム合宿
松高生になる第一歩―FAITH(信頼)を合言葉に(平野智之)
●2時間目 産業社会と人間
誰もが自信を持って生きていける社会は実現可能か(木村悠)
●3時間目 教科授業
人と学びとつながる授業(深井恵介)
●4時間目 韓国研修旅行
海を渡り、壁を越える(伊藤あゆ)
●5時間目 人権学習
わたしはここにいる(澤井未緩)
●6時間目 課題研究
答えのない問いを創る価値―〈誰もが安心できる〉の先にある課題研究(中川泰輔)
●放課後
インクルーシブな世界をつくる(平野智之)
●終章 学校訪問から考えてほしいこと
人権教育からケアの学校へ(平野智之)
●特別講座
「人間する」を忘れない高校―松高という宝物(菊地栄治)
[コラム(副題省略)]
・ビビっときたら行く(一色浴果里)
・どうやって「FAITH(信頼)」は生まれたか(松木正)
・私を支えてくれた温かい居場所(柳音羽)
・誰かのために動くということ(明見琴子)
・フェミニズム視点でジェンダー平等について考える(佐藤智美)
・根拠を持って相手に伝える(岸本真依)
・伊藤先生へ(福岡裕人)
・太鼓の音で差別のない世の中を作りたい(松江寿士)
・一生課題研究する私の「課題研究」主担者体験(小林美由里)
・「松高きっちん・みんなの食卓」を受け継いで(田ノ上優光)
・リアルインクルーシブ(常瑠里子)
・いつも自分の中にある「知る・考える・動く」(松下文香)
・結婚式を通して誰もが幸せになる世界を(原田大二郎)
・どんな立場の人たちの命も守る(西村愛)
・ともに問い続ける(島田隼人)
・「何より地域で一緒に生きることを考えなあかん」(房本晃)
・松高の学び舎づくり(吉田敦彦)
目次
●1時間目 ホームルーム合宿
松高生になる第一歩―FAITH(信頼)を合言葉に(平野智之)
[コラム1]ビビっときたら行く―私の物語の始まり(一色浴果里)
[コラム2]どうやって「FAITH(信頼)」は生まれたか(松木正)
●2時間目 産業社会と人間
誰もが自信を持って生きていける社会は実現可能か(木村悠)
[コラム3]私を支えてくれた温かい居場所(柳音羽)
[コラム4]誰かのために動くということ―松高きっちんで気づいた私の軸(明見琴子)
[コラム5]フェミニズム視点でジェンダー平等について考える(佐藤智美)
●3時間目 教科授業
人と学びとつながる授業(深井恵介)
[コラム6]根拠を持って相手に伝える―「論理コミュニケーション」を受け持って(岸本真依)
●4時間目 韓国研修旅行
海を渡り、壁を越える(伊藤あゆ)
[コラム7]伊藤先生へ(福岡裕人)
●5時間目 人権学習
わたしはここにいる(澤井未緩)
[コラム8]太鼓の音で差別のない世の中を作りたい(松江寿士)
●6時間目 課題研究
答えのない問いを創る価値―〈誰もが安心できる〉の先にある課題研究(中川泰輔)
[コラム9]一生課題研究する私の「課題研究」主担者体験(小林美由里)
●放課後
インクルーシブな世界をつくる(平野智之)
[コラム10]「松高きっちん・みんなの食卓」を受け継いで(田ノ上優光)
[コラム11]リアルインクルーシブ(常瑠里子)
[コラム12]いつも自分の中にある「知る・考える・動く」(松下文香)
[コラム13]結婚式を通して誰もが幸せになる世界を(原田大二郎)
[コラム14]どんな立場の人たちの命も守る―インクルーシブな防災を求めて(西村愛)
[コラム15]ともに問い続ける(島田隼人)
●終章 学校訪問から考えてほしいこと
人権教育からケアの学校へ(平野智之)
[コラム16]「何より地域で一緒に生きることを考えなあかん」(房本晃)
[コラム17]松高の学び舎づくり―対話とケアで創り出す「新しい公共」立学校(吉田敦彦)
●特別講座
「人間する」を忘れない高校―松高という宝物(菊地栄治)
前書きなど
あなたがある高校に通ったとします。
その学校で、これまでの友だちとは違う「仲間」と出会い、その仲間とともに学ぶ生活の中で、あなたをカタチづくるのに欠かせないあのこと、このことが滲みだし、沸き上がり、溢れ、言葉になって、行動になって、あなたを変え、そして、あなたがいる世界をやがて優しく照らす。
この本を手に取ったあなたに伝えたいのは、そんな学校の空気や景色です。
大阪にあるローカルな公立高校である松原高校(松高)は、人と人が想いを交わし、支え合って、人間らしく生きることを大切にしてきた学校です。その学校が50周年を迎えたのをきっかけに、たくさんの人に松高を体験してもらえたらいいな! と、「本による学校公開」を企画しました。
たくさんの人とは、学校に優しさや支え合いを求めたいと思う人、一人ひとりが大切にされる社会を作りたいと思う人、これから先生になりたい人や先生としていろんな問いを持っている人、そして、教育につながるすべての大人のみなさんです。
本書では、高校3年間の取り組みが次のように6時間授業の構成でギュッと縮めて描かれ
ています。
1時間目、ホームルーム合宿。松高生の原体験です。
2時間目、産業社会と人間。よのなかのホットな話題とわたしがつながっていきます。
3時間目、数学。効率が悪く数字にならない学びが教員のアイデンティティを鍛えます。
4時間目、韓国研修旅行。準高生から受け継いだ哲学をエンジンに、願いを実現します。
5時間目、人権学習。すべての生徒が当事者です。その声を聴いてください。
6時間目、課題研究。自分を見つめながら、答えのない問いを磨きます。
放課後。松高のゴールデンタイム。「こんなことしたい」から松高の宝が生まれました。
終わりに。元校長先生から松高がめざしている教育についてお話があります。
特別講座。長い間松高を応援しているおもしろい大学の先生が東京から来られます。
そして、「コラム」には、各時間に関係する先生や応援団の方々、そして、松高を巣立ち、活躍する卒業生の素敵な話がちりばめてあります。
そこで、学校とは、学ぶとは、人間らしく生きるとは何か、一緒に考えてもらえたら嬉しいです。そして、こんな学びの場がもっと素敵になり、広がり、続いていくためにあなたの声を寄せてほしい、力を貸してほしいと思っています。
ようこそ、大阪府立松原高校へ。
====「はじめに」より====