目次
はじめに:一橋大学アウティング事件がつむいだ変化と希望 一〇年の軌跡(松中 権)
第一部:一橋大学アウティング事件と家族と友人
第一章:一橋大学アウティング事件の経緯、主要な訴訟期日など(松中 権)
第二章:彼が遺した「黄色い一枚の絵」、家族や友人の「希望」を、未来につなぐために(松中 権)
第二部:一橋大学アウティング事件と大学
第三章:ハラスメントと大学と学生―研究と教育を支える環境とは(本田恒平)
第四章:事件報道後、大学の内部では何が始まったのか(太田美幸)
第五章:アカデミアの宿題―アウティング事件が大学に問いかけるもの(川口 遼)
第六章:国立市の動き くにたち男女平等参画ステーション・パラソル(木山直子)
第三部:一橋大学アウティング事件と社会
第七章:『あいつゲイだって アウティングはなぜ問題なのか?』出版後の反応―アウティングしてしまう側の視点を考える(松岡宗嗣)
第八章:報道の現場から―社会に問いかけた課題と「現在地」(奥野 斐)
第九章:一橋大学アウティング事件を契機とした「アウティング」に対応する法制度の展開(神谷悠一)
第一〇章:一橋大学アウティング事件から一〇年。彼が生きたいと願った未来へと、一〇年間でどこまで近づけたのか(松中 権)
付録:「彼は私」でした。一橋大学アウティング事件で、電通を辞めて向き合ったひとつの感情(松中 権)
前書きなど
一橋大学アウティング事件は、制度を前に進め、確実に社会に変化をもたらしてきました。
そして、変化は、社会だけではありません。
多くのLGBTQ+当事者は、「彼は私だ」と感じ、自らの人権が守られていないことについて、声をあげる人も増えてきました。また、性のあり方を問わず、多くの人が心を痛め、もし自分がアウティングの現場にいたら、そして、もし自分がアウティングをしてしまったら、と考える時間を重ねてきたと思います。一人ひとりに、何らかの意識の変化、行動の変化、描く未来への変化がもたらされているのだと思います。もちろん、ご家族やご友人にも、ゆっくりと時間をかけて。
今年の八月二四日で、彼が亡くなられて一〇年となります。節目と呼ぶのが良いのかはわかりませんが、歴史と変化と希望を、きちんと書籍としてまとめて残し、ひとりでも多くの方に、手に取っていただく機会をつくりたい。そんな想いを共有する八名が、それぞれが感じ、考え、動き、見つめてきた一〇年間の変化を文章に綴りました。みなさんが、経験してきた一〇年間の変化と、今まさに抱き、描いている希望と重ねながら読んでいただけると嬉しいです。そして、この書籍が、一人ひとりが当然にもっている権利を勝ち取るために、次の一歩を踏み出す、みなさんの背中をやさしく支えるものとなりますように。
(はじめに より)