目次
【目次】
はじめに 西田 司
多拠点で建築を考えること 中村 航
海の向こうへの好奇心をもち続ける 杉田真理子
座談会 これからの建築・都市の実践を、グローバルに思考するために
進行 杉田真理子 八木祐理子×藤井勇人×畑山明人×田熊隆樹×小林一行
第一章 ヨーロッパ
ロンドン
多様性を祝福する創作活動
高田一正・八木祐理子/PAN- PROJECTS
アントワープ=京都
確たるモノを選別し、適した解答を与える
服部大祐/Schenk Hattori
クール=東京
自然の密度を変えて環境を顕在化させる
杉山幸一郎/atelier tsu
コペンハーゲン
土地の特異性をつかみ、異邦人ならでは視点をもつ
金田泰裕/yasuhirokaneda STRUCTURE
コペンハーゲン=東京
歴史、風土、文化の条件の徹底
森田美紀・小林 優/mok architects
第二章 アメリカ
ボストン
多様な人が豊かに暮らす都市をつくる
古澤えり/HR&A Advisors
リオ
人種の混淆から生まれる多方向な景色
藤井勇人/+5581studio
第三章 オセアニア
メルボルン
暮らしのなかのランドスケープデザイン
畑山明人/SMEC,Goot Local
第四章 アジア
上海=東京
地域の人々との交流を大事にした設計活動
小嶋伸也・小嶋綾香/小大建築設計事務所
上海=東京
手の痕跡から生まれる土着的なデザイン
寺崎 豊/隈研吾建築都市設計事務所上海事務所
宜蘭
自由で民主的な場で働く
田熊隆樹/マンライスタジオ,田中央工作群元所員
ホーチミン
目の前にあるものを使いこなしてつくり上げる
山田貴仁/studio anettai
バンコク=東京
コンテクストから解放し、日常に接続させる
久米貴大/Bangkok Tokyo Architecture
バンコク=東京
アジアでインターナショナルな建築教育に携わる
中村 航/Mosaic Design
ニューデリー=東京
持続可能な社会をつくる建築の探求
飯塚哲平/Studio Juggernaut
第五章 アフリカ
カンパラ=東京
揺らぎと骨格
小林一行・樫村芙実/テレインアーキテクツ
海外で仕事をする・拠点を構える際に考えるべきこと 杉田真理子
NO.1 ビザ NO.2 生活費 NO.3 健康保険 NO.4 税金NO.5 友好関係・言語
前書きなど
【はじめに】
本書は、海外に拠点をもつ建築家・ランドスケープデザイナー・都市コンサルタントらの活動をまとめ、海外で働くことに興味をもつ方に役立てられるよう編んだものである。具体的には土地への眼差しや、そこから生まれた作品や発見、そしてそこで見つけたノウハウをQ&Aで紹介している。
寄稿してくれた若手一六組は、日本と海外を行き来、またはその土地に根づき、建築やまちづくりを営み、風景や文化を日常に実感し、創造している。彼らが語るそれぞれの国での活動は、まさに現在進行形で積み上げられているものだ。それをリアルかつ手触り感ある言葉で、素晴らしい原稿にしてくれたことに、ここで改めてお礼申し上げたい。
私も編集委員を務めた二〇二三年発刊の『多拠点で働く』では、日本国内の地方と都市を行き来しながら営む建築やまちづくりを紹介した。この本で「多拠点」で働くことの可能性を改めて感じ、その続編として今回は「海外編」を企画した。そこで、世界五大陸の国々を網羅できるよう、そして特にいくつかの拠点をもっている方を、同じく編集委員の中村 航さん、杉田真理子さんと探していった。お二人の広いネットワークから、海外と日本の両方に拠点をもち、プロジェクトを進めている著者を本書の半数近くも集めることができた。それがとても現代的だと感じる。成熟社会であるがゆえに新築が難しくなった日本をいったん離れ、海外でキャリアを積み、海外拠点を維持しつつ国内にも回帰する。そんなことができると建築のチャンスはより広がり、建築界への刺激にもなりそうだ。
改めて挿絵のように差し込まれる街の写真や彼らが積み上げてきたノウハウが詰まったQ&Aを合わせて読むと、海外で働いたり、暮らしたりすることが、いかに素晴らしい時間とインプットに満ちているかを感じる。読者にもぜひ本書を通して、海外と日本の時間が地続きに動いていることを実感してほしい。今この瞬間も、地球のどこかで、新しい風景がその土地と呼応しながら生まれている。海外のローカルな風景と日本のローカルな風景が両方自分の実感になる感覚をもち、そしてその土地固有の営みや暮らしを風景とセットで創造できたら、素晴らしいと思う。本書が海外や建築への探究心を育み、その背中を押す一助になることを祈っている。
二〇二五年三月 西田 司