紹介
満蒙開拓団――それは1932年から敗戦に至るまで日本帝国によって送り出された「満洲国」への日本人農業移民である。対ソ防衛など軍事的要請から開拓民の約半数が「北満」に入植したが、敗戦前後のソ連侵攻と現地の混乱により約27万人のうち約8万人が犠牲になったほか、約1万人が中国残留邦人として取り残された。本書は、その動員・送出過程と共に、満洲現地での農業経営や生活実態を開拓団と母村の関係や異民族支配の動向に着目して明らかにし、さらに日本帝国崩壊後に「引揚者」となった開拓民の生活についても分析する。こうした歴史の検証を通じて、満蒙開拓団を現代の「戦争を知らない世代」や地域社会がどのように受け止めるのかを考える。
目次
序 章 いまなぜ満蒙開拓団を問うのか
第一章 全国一の送出地域―長野県下伊那郡川路村―
第二章 模範村の分村運営―山形県西村山郡高松村―
第三章 分村計画の帰趨―長野県諏訪郡富士見村―
第四章 強行された「北満」入植―新潟県中魚沼地方―
第五章 「民族協和」の位相―満蒙開拓団と現地住民―
第六章 中国側は満蒙開拓団をどうみたか―中国各地で刊行された雑誌・評論を手がかりに―
第七章 帰ってきた村の人びと―長野県下伊那郡川路村―
終 章 地域における国策移民の展開と帰結