目次
はじめに
ファッションの定義/衣服について思考すること/なぜヒトは衣服を着はじめたのか/ファッション研究の現在/ファッションの三つの様態
第一章 ファッションデザインとは何か
ファッションとファッションデザイン/デザイン=外観なのか/デザインの方法論/ブランドのデザイン/システムのデザイン/二つの差異化/モノのデザイン
第二章 スタイルと装飾
シルエットで語られる歴史/様式と文体/衣服と言語の類似性/配置と構成/機能的な装飾
第三章 モダニズム再考
モダニズムとは装飾の排除なのか/ミニマリズム——反復と差異/美術におけるモダニズム——ジャンルの固有性/ボードレールとモダニティ/コム・デ・ギャルソンはアヴァンギャルドか?
第四章 衣服と身体
衣服をめぐるトラブル/第一の衣服としての身体/パレルゴンとしての衣服/潜在的身体としての衣服
おわりに
あとがき
前書きなど
本書「はじめに」より
本書が目指すのは、ファッションにまつわる言葉の定義である。と、言った途端にすぐさま註釈が必要となるのだが、実のところ「ファッション」という言葉の指示対象がそもそも明確ではない。それゆえ本章ではファッションがどのように定義――整理と言ったほうがよいかもしれない――されうるのかを検討する必要がある。もうひとつ本章で行いたいのは、衣服について思考することの意味の共有である。本書のベースになったテクストは、基本的には批評として書かれたものである。だが、それを下支えしているのはファッションに関するアカデミックな研究である。ファッション研究――近年、欧米ではファッション・スタディーズと呼ぶことが多くなっている――が現在どのような状況にあるのか、そこも議論しておかねばならないだろう。それによって、本書の射程がより明確になるはずである。