目次
木橋
土堤
なぜか、アバシリ
破流
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◎小説前史
木橋[初出版]
少年沖仲仕
今「ある事の思い」
一九七〇年十一月四日
螺旋
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解説「いま、永山則夫をどう読むか」早助よう子×マニュエル・ヤン
解題「殺人者/小説家」
前書きなど
早助よう子――永山というと、四人を射殺した原因として幼少期の苛烈な家庭環境が挙げられます。作品もそちらのイメージが強かったのですが、私も今回読み直してみて、労働体験が思ったよりも多く書かれていることに気づきました。網走や青森での幼少期の家族の話が一連の作品を構成する横糸とすると、都会へ出てからの労働体験は縦糸ですね。「土堤」には横浜の朝の寄せ場の様子も書かれていて、主人公は手配師に声をかけられて仕事へ行くのですが、今となっては時代の証言としても貴重なものではないでしょうか。
マニュエル・ヤン――永山も入獄した当初、自殺願望があったそうです。でも、獄外の運動や闘争とつながりのある支援者をはじめとする他者との交流のおかげで、多少風通しのいい「自分一人の部屋」を見つけ、死に物狂いの独学を重ね、正気と生命力を取り戻せた。そこで書かれた自伝小説をまとめたこの「集成」は、すべてを失い最後には生までを奪われてしまう極限のプロレタリアがディストピアを瞬間のユートピアに変えた普遍的な証しです。今こそ、読み直されるべきです。
――「解説」より