紹介
最晩年、「いずれ本になるだろう」と談志が託した日記帳。
没後10年特別企画として刊行。
17歳の少年は、前座修業の日々を送りながら、
1日も欠かさず日記帳に向かっていた。
僕には、夢を追うのみで、
若さを楽しむ資格がないのであろうか。
その原因は落語なのだ。
僕の宿命なのかも知れない。
――1953年7月9日
人形町で100円小さんに小遣をもらう。しかしその場でなくす。その場で探すのも失礼だからよした。――1月20日
新東地下で「まごころ」を観る。悲しく涙がにじんだ。清く悲しい青春の一頁に感じた。――3月13日
噺が又セコになる。どうもおかしい。大きくなりたくない。しかし時は刻々と過ぎ去って行く。あせりが出る。――6月2日
コタツに入り食事をすまして日記をつけている。静かだ。まだ十時半なの
に聞こえるのは雨だれの音と、鉄橋を渡る汽車の響きが時折するのみ。日本の冬は風情がある。コタに入りながら彼女の事、噺の事、明日の事、とりとめもなく考ヘる。これも青春なのだ。――11月18日
目次
■日記 1953.1.1~12.30
凡例/新年の所感/一月/二月/三月/四月/五月/六月/七月/八月/九月/十月/十一月/十二月
■演目の記録 1952.11.11~1954.1.19
凡例/演目/談志による一九九九年の追記
■後記 松岡慎太郎(談志長男)