目次
はじめに
モンキードッグ 「犬猿の仲」はほんとうか
鵜飼の鵜 鳥が教えてくれた最高の死に方
耕す馬 野原のたんぽぽサラダ
盲導犬 自由とはビールを飲みにいく夜道
パリのニワトリ 世界との向き合い方を考える場所
あとがき
前書きなど
おもしろうて やがてかなしき 鵜舟かな
松尾芭蕉先生もそうおっしゃっている。
鵜ががんばってとった鮎を人間サマがかすめとる。それを、やんややんやとはやしたてる鵜舟のお客。愉快な夏の風物詩だ。でも、なぜだろう。はじめはおもしろいんだけど、だんだんかなしくなってくるのである。
芭蕉の時代から三百うん十年を経て、わたしも同じことを考えていた。
いや、鵜舟を見て、そう思ったのではない。見る前のことだ。
はたらく動物を取材しようと思い立ち、出版社の人とどこでなにを取材するか相談するときは楽しく盛り上がるのだが、打ち合わせの帰り道、とぼとぼと歩きながら、はたらく動物自身はどう思ってるのだろうか。おもしろいのか、かなしいのか——答えの出ない問いを繰り返した。
長良川だけでなく、大阪、長野、はてはパリまで旅をした。そして、一冊の本ができあがった。
どんな人もその人にしかできない経験をしていて、その経験ゆえの物の見方や物語をもっている。わたしは、その断片を集めるのが好きだ。それも教訓めいた立派なものじゃなく、すこし間が抜けているもの、にんまりできるもの、癖のあるものにひかれる。
今回、拾い集めたのは、犬、ニワトリ、馬そして鵜といったはたらく動物とその周辺に生きる人たちの物語。
はたして、鵜はかなしかったのかーー