目次
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第一章 「近世日本の教育遺産群」の歴史と概要
近世日本の教育遺産群とはなにか_藤尾隆志(水戸市教育委員会)
近世日本の学習と教育のネットワーク_橋本昭彦(国立教育政策研究所)
第二章 座談会
近世日本の「学び」を世界遺産に
松浦晃一郎、岩槻邦男、五十嵐敬喜、西村幸夫、橋本昭彦、江面嗣人
第三章 多様な学びの場と日本の文化
近世日本の学びにみる多様性と自主性_岩槻邦男(人と自然の博物館名誉館長)
藩の自治と藩校:儒教をめぐって_五十嵐敬喜(法政大学名誉教授)
近世庶民のリテラシー:小咄から見る江戸の文字環境_大石 学(東京学芸大学名誉教授)
第四章 世界遺産登録に向けて
弘道館と偕楽園の教育遺産の魅力:教育遺産の視点から_水戸市
近世の学校の原点、足利学校_足利市
凛とした空間で学ぶ 閑谷学校_備前市
近世最大の私塾と学びの町、咸宜園と豆田町_日田市
教育遺産群の建造物と創造的活用_江面嗣人(岡山理科大学特任教授)
「教育遺産群」をめぐる議論:学びのかたちをめぐって_西村幸夫(國學院大学教授)
前書きなど
自由で闊達な日本の学びの場
近年、日本の近世にたいする見方は大きく変わってきました。とくに「泰平の御代」と呼ばれた江戸時代は、初期や幕末を除けば大きな戦いもほぼない、世界史的にみても稀有な社会でした。また、「鎖国」や武士が支配する「身分制度社会」という印象が強いものの、民出身から武士への身分の移動や、身分を超えた広範囲な人々の交流などに目を向ければ、近世日本ならではの民主的な営みも見えてきます。
このような社会を支えたのが、近世日本の教育遺産群です。規模も学ぶ人の層も内容も異なる多様な学びの場が日本全国に広がり、社会で活躍する優秀な指導者や人材を育て、また教育のネットワークを築いていました。リテラシーの向上によって人々は情報を共有し、支配機構や自治組織を円滑に運営することで、経済や産業の発展や社会の安定を生み出しました。
本書は、「近世日本の教育遺産群」として世界遺産登録を目指す六つの資産──足利学校(栃木県足利市)、閑谷学校(岡山県備前市)、弘道館・偕楽園(茨城県水戸市)、咸宜園・豆田町(大分県日田市)の概要と魅力を紹介し、自由で闊達な日本の学びの源流を明らかにするものです。