紹介
生誕150周年を迎えた南方熊楠のエコロジストとしての実像に迫る。熊楠が残した人文・自然科学の膨大な研究資料の多くは、熊楠が後半生を過ごした田辺市の南方熊楠顕彰館に、また隠花植物標本約18,000点は国立科学博物館に収蔵されている。本書はこうした資料をベースに、博物学、生態学、民俗、信仰など、多様な視点から読み解く、南方熊楠の入門書。また、熊野古道の世界遺産追加登録を記念して、熊楠が守ろうとした熊野の自然を紹介する。
目次
特集
生誕150周年記念特集
南方熊楠と熊野の自然 伝説からエコロジストの実像へ
監修:田村義也、志村真幸、南方熊楠顕彰会(田辺市)
6 巻頭言 ナチュラリスト南方熊楠 岩槻邦男
14 基調論文 伝説からエコロジストとしての実像へ 真砂充敏・田辺市長
22 鎮守の森の生態学:発見された南方熊楠のエコロジー論 田村義也
30 南方熊楠特別賞受賞記念寄稿 菌類彩色図譜は自然の「抜書」だった 萩原博光
38 多様な熊野の隠花植物と国立科学博物館「南方熊楠コレクショ」 土永浩史
46 南方熊楠とロンドンの二つの「森」 志村真幸
52 標本鑑定にみる熊楠の交流関係:ウェッブから今日の生物学者まで 橋爪博幸
60 南方熊楠と熊野の森:生態学者・後藤伸のライフワーク 玉井済夫
70 民俗空観としての風景をみていた人々:私撰・生態民俗学者列伝 菊地 暁
77 熊楠「随聞録」と紀伊熊野の山々にすむ妖怪 伊藤慎吾
84 説話学者としての南方熊楠 杉山和也
90 南方熊楠と「現場からの声」:地域から見た神社合祀反対運動 畔上直樹
98 自由へのニューロマンス:仏教と恋と熊楠 小田龍哉
106 和漢洋の森羅万象を捉える:熊楠と近世和漢本草書(博物書) 郷間秀夫
114 特別寄稿 鎌倉時代の熊野詣を今に伝える藤原定家と熊野懐紙 恵美千鶴子