紹介
珈琲の香り、街の記憶――。1970~80年代を中心に、学生街の喫茶店から懐かしのジャズ喫茶、いまも健在の自家焙煎の店まで、喫茶店を通して街の記憶と想いをつづった、さっぽろ“青春”グラフィティー。
◇札幌初のタウン情報誌『月刊ステージガイド札幌』の編集長を務めた筆者が、自らの記憶とともに喫茶店の小さな物語を綴りました。懐かしのジャズ喫茶や学生街の喫茶店など、あの店この店のマスターや常連客に当時のエピソードや店への想いを取材。さらに、今はない店の往時の写真を添えてあの時代を蘇らせます。
◇さらに、健在の老舗や新世代のカフェ、自家焙煎にこだわる珈琲専門店など、今も訪れることのできる店も多数掲載。営業時間や料金などのデータも収録しました。巻末には、著者と同世代の直木賞作家・藤堂志津子さんとの対談や、「ELEVEN」「北地蔵」など数々の名店の店舗設計を手掛けた今映人さんへのインタビューも収録。愛すべき札幌の喫茶店への思いを、数々のエピソードと共に綴るコラム・ノンフィクションが、18年ぶりに改訂版として再登場!
目次
口絵(カラー8頁)
・喫茶店スクラップ帖…懐かしい写真と最新の取り下ろし写真で喫茶店の魅力を紹介。
Ⅰ.学生街の喫茶店
ミルク/タマキ/ドルフィン/ふれっぷ舘/Keef
・ちょっと一服① 熱気に溢れていた、あの頃の学生街
Ⅱ.時代をリードした音楽喫茶
JAMAICA/B♭/act:/BOSSA/AGIT/神経質な鶏/バナナボート/ウイーン
・ちょっと一服② 細く長く愛された、クラシック喫茶
Ⅲ.異人たち――出会いの場
ELEVEN/北地蔵/のあ/どッコ/佛蘭西市場/唯我独尊/アイス・ドアー
・ちょっと一服③ 全国に先駆けた、タウン情報誌事始
Ⅳ.カフェへの変貌――フード編
さえら/ZAZI/TOMATO MOON/櫻月(サクラムーン)/カフェ・エッシャー
・ちょっと一服④ 我が愛しのナポリタン
Ⅴ.カフェへの変貌――インテリア編
ロマンツアー/VIDERO/倫敦館/CATCH・BOX/テルサラサート/円山茶寮/ホールステアーズカフェ/森彦
・ちょっと一服⑤ 紹介できず心残りな喫茶店エトセトラ
Ⅵ.古き良き時代の喫茶店
千秋庵喫茶部/西林/コージーコーナー/桃山/ブルーシャトー
・ちょっと一服⑥ 喫茶店史遺した、真の風俗史家
Ⅶ.ビジネス街の喫茶店
ポールスター/うら/ベルン/シャノアール/つむぎ/るふらん/ロックフォールカフェ
・ちょっと一服⑦ 札幌初のコーヒーは、明治期開店の有合亭
Ⅷ.自家焙煎のパイオニアたち
可否茶館大通店/可否茶館倶楽部/蔵人/和田珈琲店/カフェ・ランバン/斎藤珈琲/麻生茶房/菊地珈琲本店/円山坂下宮越屋珈琲本店/カフェ・ド・ノール/basic
・ちょっと一服⑧ 自家焙煎の先達とその継承者たち
Ⅸ.アフター・アワーズ
・インタビュー [今映人]……………独自のスタイル生み出す、喫茶店設計の達人
・対談 [藤堂志津子×和田由美]……私たち“喫茶店世代”
前書きなど
◆あとがきより
本書は、朝日新聞北海道版の夕刊紙面で、2003年9月2日から2005年5月25日にわたって連載された原稿に、加筆・訂正を加えたもので、単行本化にあたって新たにコラムを書き下ろし、インタビューと対談を付け加えている。
私はこれまでにも、亀の子タワシやミルキーなど時代の記憶を辿る〝モノ語り〟や、四季折々の食材にまつわる想い出を綴ったエッセイなど、様々な新聞連載を手掛けてきた。ある時、新しい連載の企画を考えることになり、今度は何か違ったジャンルに挑戦してみたいと思っていたところ、私より若い世代の人たちが、札幌の古い喫茶店について知りたいという。1970年以前のことであれば、故・和田義雄さんの著書『札幌喫茶界昭和史』に詳しいのだが、それ以降をまとめたものは皆無だったので、私に書いて欲しいというのだ。最初は唐突な話だと思った。けれど、かつてタウン情報誌『ステージガイド札幌』の編集長をしていた上に、70~80年代に渡って『札幌青春街図』というタウンガイドを4回発行したこともあり、普通の人よりはこの街の喫茶店に詳しいことに気づいた。〝喫茶店史〟は無理だとしても、グラフィティー(落書き)というスタイルならば、70年代以降の空白の時代を多少は埋めることが出来るかもしれない。そう思うに至ったのである。(以下略)