目次
はじめに
第1章 九大本『NIPPON』の書誌情報
はじめに/1.シーボルトと『NIPPON』/2.『NIPPON』の紙と透かし(Watermark)
3.『NIPPON』図版の作成/4.『NIPPON』の「INHALT」/5.『NIPPON』の配本と値段/おわりに
第2章 『NIPPON』の色つき図版
はじめに/1.シーボルトの死去とクォリッチ版『NIPPON』/2.色つき図版の比較
3.『日本植物誌』(Flora Japonica)と『日本動物誌』(Fauna Japonica)/おわりに
第3章 『NIPPON』の原画・下絵・図版
はじめに/1.石の宝殿/2.嬉野温泉/3.与次兵衛瀬/4.愛宕山/5.朝鮮/おわりに
第4章 『NIPPON』のフランス語版 『Voyage au Japon』の復元
はじめに/1.1837年の予約募集書/2.『Voyage au Japon』図版の特徴
3.『Voyage au Japon』図版の復元/4.『Voyage au Japon』の本文/おわりに
第5章 『NIPPON』のロシア語版
はじめに/1.1840年の2つの雑誌/2.1854年刊『日本への旅』の検討
3.『日本への旅』の図版/4.日本地図の検討/5.1850年代のロシア/おわりに
第6章 『NIPPON』の山々と谷文晁『名山図譜』
はじめに/1.『NIPPON』図版の山々/2.谷文晁『名山図譜』
3.『NIPPON』と『名山図譜』の比較/4.富士山の火口図/おわりに
第7章 『NIPPON』の捕鯨図
はじめに/1.シーボルト以前の捕鯨研究/2.『NIPPON』のなかの捕鯨
3.『NIPPON』の捕鯨図/おわりに
資 料
資料1 九大本『NIPPON』の「INHALT」
資料2 九大本『NIPPON』図版の透かし・石版画工名など
初出一覧
おわりに
前書きなど
帰国したシーボルトが自費出版した『NIPPON』に,当時のどのような日本の姿が描かれているのかは,それほど知られていない。『NIPPON』は,彼以前のケンペルやティツィングらの著書に比べると,質量ともに他を圧倒する。特に367枚もの図版には,日本の風景・風習・人物・産業・技術・文化・地図など多岐にわたる膨大な情報が収められており,これを購入したヨーロッパの人々は,いまだ未知の国であった日本を容易にイメージすることができた。
本書の課題は,『NIPPON』第1~7章はどのような順番で,本文と図版はどのような組み合わせで出たのか,図版は何を原画としどのように作成・彩色されているのか,フランス語版とロシア語版の内容,シーボルトはいかに関わったのかなどである。これらの課題を解決するため,オランダをはじめドイツ・イギリス・ロシアなどに分散したシーボルトコレクションの調査はもちろん,国内外の機関が所蔵する『NIPPON』を比較検討し,その制作・印刷・出版過程を明らかにする。 (本書「はじめに」より抜粋)