紹介
近現代の東アジアを舞台に
激動の時代を生きる人々のスペクタクル・ロマン!
韓国を代表する大河小説『土地』20巻を世界初の完訳
『土地』は韓国の女性作家の草分け的存在であり、デビュー当時から高い評価を受けてきた朴景利の代表作である。1969年から94年まで25年にわたって書き継がれた、韓国現代文学における最大の大河小説であり、最も優れた作品の一つにも数えられている。
朝鮮王朝末期、政治を担う者たちの間で主導権争いが続き、その混乱につけ込んで侵攻する列強や日本の存在と、甲午農民戦争(東学の乱)など民衆による抵抗運動は、国内の混乱に拍車をかけた。混沌とした社会情勢を背景に、物語は1897年に始まり、日本による植民地支配を経て、1945年の「解放」の日(8月15日)に終わる。朝鮮半島の近代史を経糸に、その時代に翻弄されるさまざまな立場、職業、境遇の人々の日常から生まれる愛と恋、葛藤、悲しみ、喜び、苦難を緯糸に織り成される壮大なタペストリーともいえよう。
小説の舞台は朝鮮半島の南端に近い慶尚南道[キョンサンナムド]河東郡[ハドングン]の農村・平沙里[ピョンサリ]から、間島[カンド](現在の延辺朝鮮族自治州一帯)へ移り、後半では朝鮮半島に戻る。
物語の軸となる崔西姫[チェソヒ]は平沙里の大地主・崔家の一人娘である。崔家の財産を奪おうという陰謀が巡らされ、数奇な運命によって天涯孤独の身となった西姫は、崔家の使用人や平沙里の農民たちをひき連れて間島へ移り住む。西姫はそこで商売をして財産を増やし、再び故郷に戻って崔家の土地を取り戻すことを誓う。
朴景利は西姫を悲劇のヒロインとして描いているのではない。気が強く、才覚のある一方で、感情表現がうまくできない西姫の抱える孤独は切ない。さまざまな登場人物が時代の荒波にもまれながら生きる姿は、叙情を排した筆致で克明に描かれている。すべての人間が業として抱える嫉妬や猜疑、邪悪さといった負の面を暴きだす一方で、日々の暮らしの中で助け合い、互いを思いやる人の優しさ、温かさも細やかに語られる。そして貧しい農民の間にも、結ばれぬ運命に逆らおうとする苦しい恋や心に秘めた恋があり、四季折々に変化する美しい自然の景観とともに、物語を彩っている。